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優れた「2D表現」とのギャップを埋めるためにーープロダクション・デザイナーが語る、3DCGアニメーションの進化

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 テクノロジーによって進化を続けている、アニメーション業界の最前線に迫る本特集。今回は、ポリゴン・ピクチュアズ社のプロダクション・デザイナーとして、作品の世界観を決める「コンセプトアート」の制作を担当する、フェルディナンド・パトゥリ氏へインタビュー。3DCGアニメーションの進化から、映画やゲームと相互に与え合う影響、日本のコンテンツがもつ強度まで、話題は幅広く展開した。(編集部)【最終ページにアニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』の瀬下寛之監督サイン入りプレスシート(非売品)のプレゼント情報あり】

フェルディナンド・パトゥリ氏

高まる「ワールドビルディング」の重要性

――パトゥリさんはプロダクション・デザイナーとして、作品の「コンセプトアート」を担当されているということですが、具体的にはどのような仕事なのでしょうか?

フェルディナンド・パトゥリ(以下、パトゥリ):監督のアイデアを絵に起こして、作品の世界観を構築する仕事です。例えば、宇宙船ドックを描くなら、造船のプロセスや閉じたシャッターの奥に格納されているものまですべて想定し、目に見えないところまで3Dモデルで作った上で、フレームを決めて一枚の絵として書き出し、Photoshopで色や雰囲気を作り込んでいく――という作業になります。

 リアリティを持たせるためには地道なリサーチも重要で、例えば我々が制作しているアニメーション映画『GODZILLA』シリーズなら、「未来の日本にどんな植物があるのか」「それがゴジラと接触してどう変化するか」ということを細かく想定して、風景を描き込んでいきました。最初は、“人を食べる植物”のような 発想もしたのですが、監督との相談で、少しファンタジー過ぎるのではないかと。こうした努力は映像からは伝わらないのですが、最初にしっかりとしたイメージを構築することで、あとの作業を引き継ぐデザインチームが、それぞれに違和感なく、統一された世界観を作り上げていってくれるんです。

パトゥリ氏によるコンセプトアート

――最初の段階でかなり緻密に作り込んでいるようですが、例えばメカニックをデザインする上で、実際にモックを作ってみたりもするのでしょうか?

パトゥリ:そうですね。例えば銃なら、デザイナーが段ボールで形を作ってみて、重さを推測したり、大きさ、扱いやすさを検討したり、細かく調整します。大きなメカなら、3DCGで作ってみて、ボストン・ダイナミクスの最新のロボット研究なども参照しながらリアリティを追求して、なおかつ面白さも出す、ということをしているんです。グッズ化することがあれば、おもちゃメーカーの人もきっと助かりますしね(笑)。

――監督の言葉から、現実的な機能も考慮してビジュアル化していくと。まずは世界観を緻密に構築し、そのなかで物語を動かしていく、という「ワールドビルディング」的な手法は、実写映画でもひとつの主流になっているそうですね。

パトゥリ:ハリウッドでは当たり前になっていて、私自身、作品をつくる上でベストな方法だと考えています。そのためには膨大な情報を整理できるマシンパワーとともに、人の知識が必要になる。先ほど、植物の例を出しましたが、石は水でどう削られていくかとか、どんな状況下でどんな動物が繁栄するかとか、そういうことをよく知っている人がいないと、物語の出発点になる世界観が薄っぺらなものになってしまうんです。

 緻密な世界観の構築がリアリティを生んでいる例として、クリストファー・ノーラン監督の『バットマン』シリーズがあります。言ってしまえば、スーツを着たおじさんが飛び回るファンタジーなのに、とても現実的で、カッコよく見える。それは、どのシーンを見ても細部に渡って統一された世界観が行き届いているため、観客の脳が「この世界はあり得る!」と認識して、ストーリーに没頭できるからだと思います。いくらストーリーがよくても、世界観の構築がずさんだったら、没入することはできない。3DCGアニメーションはこうした実写映画と近い部分も大きいですし、互いにいい影響を与えつつ、こちらも負けないものをつくりたい、と思っています。

2Dと3Dのギャップが埋まってきている

――CGアニメーションの世界で、近年で特に技術的に進化した部分はありますか?

パトゥリ:ひとつ大きいのは、「カメラマップ」の進化でしょうか。もともとは手描きのアニメーションで、一枚絵の背景をうまく動画として成立させる技術でしたが、これが3Dアニメでも違和感のないほどに進化しています。また、今年2月に発売された『ドラゴンボール ファイターズ』というファイティングゲームが好例なのですが、2Dと3Dを本当にうまく融合することができるようになってきているのも、大きな進化です。ポリゴン・ピクチュアズでも日々研究しているのですが、2Dアニメにおいてはあえて省略したり、強調したりすることで自然に、気持ちよく見せているものがあります。例えば、キャラクターの表情。人の手で描けば、目鼻の表現、影の当たり方や輪郭も含めて、シーンに合わせたものに調整できます。けれど、コンピュータにはどんな見え方が心地いい、という判断ができないし、それを瞬間ごとにいちいち指示することもできないから、どうしても不自然な“作画”になってしまうことがあるんです。特に女の子のキャラクターは、顔に変な影ができて、「あれ? ちょっとかわいくないな」となってしまうと困るので、顔だけ2D表現する、ということもあって。ただ、最近の技術でそういう部分を少しずつ、自動化できるようになってきています。


――なるほど、2Dと3Dのギャップが埋まってきている、ということでしょうか。

パトゥリ:そうです。2Dの方が歴史がずっと長いですから、人の動きや表情、シェーディング(明暗のコントラスト)のつけ方などは、本当に気持ちいいものに最適化されている。3Dの表現がそこに至るにはまだ時間がかかりそうですが、一方で、人が描くと当然疲れますし、3Dであれば、アニメシリーズの始まりと終わりで作画が変わってしまう、といったことは防げますね。

――作画崩壊、と言われてしまうものですね。いずれにしても、CGであれば安定的なクオリティで出せる、というのは大きそうです。

パトゥリ:ただ、私は2Dの手描きアニメーションが大好きなんです。シェーディングのようなもの以外にも、3Dにはできないものがたくさんある。例えば、3Dではデフォルメした表現が難しいので、“熱いシーン”は2Dのアニメーターが描いたほうが雰囲気が出ます。3Dもそういう表現ができるようになることを目指しているし、逆に3Dを取り入れている2Dスタジオもあって、こちらもお互いのいい部分を吸収し合いながら、進化していけたらいいなと思っています。

――ゲームのお話も出ましたが、映画にゲーム的な表現が取り入れられている、という話も聞きますし、映画監督/アーティストのデヴィッド・オライリーによるシミュレーションゲーム『Everything』のプレイ映像がアカデミー賞にノミネートされる、というニュースもありました。ゲームと映画の関係については、どう捉えていますか?

パトゥリ:お互いにリスペクトし合っている関係だと思います。映画的な演出をゲームに取り入れることもあるし、もちろん逆もある。強いて言うなら、映画のほうが少し先に行っている、という感じでしょうか。最近の大作ゲームは開発に3~4年は平気でかかりますが、映画は長くて2年くらい。最新の技術を取り入れやすい分、本当に若干ですが、映画の方が進んでいるのかなと。

      

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