特集「コロナ以降のカルチャー テクノロジーはエンタメを救えるか」(Vol.4)
ポリゴン・ピクチュアズ 塩田周三代表に聞く、コロナ時代の新しいワークフローとアニメ業界の今後
リアル空間のエンタメはなくならない
ーー新型コロナウイルスの影響で多くのTVアニメの納品が遅れ、放送延期が相次いでいます。ポリゴン・ピクチュアズさんは元々納品が早いことで有名ですが、このアニメ業界の現状をどうお考えですか。
塩田:我々も広義のアニメ業界に身を置いているとはいえ、中心にいるわけではないので、きちんと状況を把握できてはいないのですが、2つの側面があると思います。ひとつは技術的な側面でそもそも制作が難しくなるということ。とりわけ音声関係などの一斉に集まることを前提にしていた場面をどうするのかということです。
もうひとつは、アニメ業界には紙で描いている人もたくさんいて、その中には元々リモートでやっている人もいたのでその点では変化がないでしょうが、サプライチェーンがどこかで詰まってしまうと、連鎖反応的に影響してしまうということです。しかもそのサプライチェーンが被りまくっているわけです。これは元々アニメ業界が持っていた脆弱性によって起こったことだと思います。通常の製造業と違ってほとんど在庫を持っていないわけですから。なので、今起こっていることの一部はコロナの影響と言えるでしょうが、元々抱えていた脆弱性のために起きるべくして起きた部分もあるのではないでしょうか。
ーー御社は今回のことで、会社の方向性を変える必要を感じてはいますか。元々、Netflixさんとの関係が深く、配信の需要は高まっています。
塩田:それはないですね。ウチはウチが来た道を進むだけで、前々から考えていたことを倍速でやることになっただけですから。最近、ニューノーマルという言葉をよく聞くようになりましたが、違和感があるんですよね。今回のことで大きく揺り動かされたことは確かですが、元々ノーマルなんてなくて、常に変わっていくものだと思いますし。
マーケットに関して言うと、今はライブで体感するものは軒並みできませんが、人間は集まって楽しみたいという欲求を持っていますし、ライブ空間のオンリーワンな体験の価値にお金を使いたいというのは、これからも続くはずです。物理的なライブ空間に何らかのオンライン要素を入れるような、よりインテグレートされたものが出てくるかもしれませんが、大きな軸足のひとつとしてリアルなライブはなくならないはずです。我々としても、今年は無理でも来年以降、ライブのマーケットも相変わらず追いかけていきたいと思っています。