『銀河の一票』が最後まで美しかった理由 誰も“いないこと”にしなかった珠玉の群像劇

『銀河の一票』が最後まで美しかった理由

 『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)はどこまでも美しい。本当に「泣きそうになる」ぐらいに。多分それは、第10話の回想における「銀河はどうしてこんなにきれいなんでしょうか」という若き日の鷹臣(坂東新悟)の問いかけに対する茉莉の母・瑠璃(本上まなみ)の「1つ1つの星がきれいだから」という答えと同じで、すべての登場人物を輝かせるドラマだったからだろう。

 第10話における茉莉(黒木華)と雨宮(三浦透子)の場面で、「あなたは私の特別です」という茉莉の言葉に対し、雨宮が喜ぶのでも泣くのでもなく、高校生の頃の彼女がなりたかった「強く優しい」笑顔で返すように。彼女や「スナックとし子」の元常連客たち、介護士の大樹(伊能昌幸)、五十嵐(岩谷健司)に助けられた青年・北斗(阿久津仁愛)らの活躍は、人は信頼できる誰かと出会い「1人じゃない」と感じられたとき、あるいは自分の能力を最大限に活かせる場所に出会ったときこそ輝くのだと教えてくれた。

 また、魅力的だったのはあかり陣営だけではない。同じく都知事選に出馬する、飄々とした風間藍生(梶裕貴)と、彼を支える葛巻(堀部圭亮)ら大人たちの静かなかっこよさ。回を重ねるごとに新たな一面が見えてくる日山流星(松下洸平)。秘書の昴(倉悠貴)との絶妙なコンビネーションはいつまでも見続けていたくなる面白さだった。

 そしてそんな、脚本家・蛭田直美によって緻密に描き込まれた群像劇とも言える本作は、月岡あかり(野呂佳代)の目指す社会同様「誰も取りこぼさないドラマ」を目指したのだと思う。

 「明るい方へ」とは、第1話で何度も繰り返された言葉だ。元々茉莉が母・瑠璃に言われた「道に迷ったらね、明るい方へ行くの」という彼女の人生の指針のような言葉であり、茉莉があかりと初めて会ったときにあかりが言ったことで運命を感じずにはいられなかった言葉でもある。

 「月岡あかり」という名前、茉莉が大切にしているおもちゃの電球の灯りなど、本作の至るところに「明」のイメージは散らばっている。さらに、白樺透(渡邊圭祐)のYouTuberとしての名前は「ブライトブラインド」だ。それは交通事故で亡くなった彼の相棒・明(望月歩)がつけた名前である。「俺が明るいって書いて明だから、明るいブライトと見えない人のブラインド」という意味を込めて、視覚障害を持つ明はその名前をつけた。

 つまりここで「見えない」という言葉は、本作にとって重要な意味を持つ「明るい」と同じくらい大切な言葉として扱われていることが分かる。また、第1話で茉莉が、第2話ではあかりが、第4話では五十嵐が、それぞれのモノローグパートで点字ブロックの上にいる人・ものを動かそうとしていることからわかるように、この物語の足元には常に、それを必要としない人々がつい意識の外に置きがちな点字ブロックが存在していた。手話が堪能な雲井蛍(シシド・カフカ)を中心に、一般的に知られていない「ろう通訳」が何度も登場したのも画期的だった。

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