『銀河の一票』が最後まで美しかった理由 誰も“いないこと”にしなかった珠玉の群像劇

次に、「見えない」は、多くの人からは「見えていない」「いない」ことにされている人々の話とも言える。茉莉の父・鷹臣(坂東彌十郎)の後妻であり、車いすユーザーである桃花(小雪)が第1話で「悪気はないんだよね、ただいないだけ。あの人や皆様の世界には私たちが」と言うように。さらには第4話における「非課税世帯は全世帯の24%」への言及にも共通したものを感じる。「多くの有権者にとって生活困窮問題は対岸の火事、自己責任」だから「選挙に勝つための政策として生活困窮者への支援を入れてはならない」。それが、元々の茉莉や五十嵐たちにとっての「選挙に勝つための正解」だった。その24%の人々の票を集めることに勝ち筋を見出そうとするあかりの都知事としての素質を描くだけでなく、「いないことにされてしまう」人たちの存在を描いてもいた。
第10話終盤において、第1話冒頭の言葉が繰り返された。「子どもの頃からそうでした。目指す何かを見つけると、それに向かって一直線。カラスの家が見たかった。虹の根元に触りたかった。銀河線路が見えた気がして、走って走って走って、迷子になった」という第1話の茉莉のモノローグが、第10話において今度は「カラスの家とか、虹の根元とか、銀河線路とか、たとえ辿りつけない場所だったとしてもまっすぐ走ってっちゃうのが茉莉ちゃんだもんね」という流星の言葉を通して繰り返される。

第10話を観ていて改めて思ったのは、私たち視聴者が知っているのは茉莉とあかりが出会った後からの「物語」に過ぎないのだということ。第1話で「友達はいません」と言った茉莉の傍に、ずっと新聞記者・雨宮はいた。幼なじみの流星は、誰よりも茉莉のことをよく知っていて、遠くからずっと見守っていた。茉莉は今も、これまでもずっと、1人ではなかった。
そして、五十嵐と、彼が未だに「ボス」と言い続ける民政党幹事長・鷹臣、幹事長政策秘書・雫石(山口馬木也)の間にもあったのだろう「物語」が、きっと本作最大の謎である「手紙」の答えを教えてくれるに違いない。昴の「ザネリって、悪役なんですか?」という問いかけに対して、流星は「違う、違うよ」と答える。それならきっと、「悪役」に徹している茉莉の父・鷹臣もまた、「自分が背負う物語を変えただけ」で悪役ではないのだろう。誰が勝ってもおかしくない、それぞれの「物語」を背負った人々の戦いの先に、果たして何があるのか。
■放送情報
『銀河の一票』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:黒木華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉悠貴、小雪、本上まなみ、シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也、木野花、岩松了、坂東彌十郎、松下洸平ほか
脚本:蛭田直美
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧悠輔、稲留武
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
音楽:坂東祐大
主題歌:浜野謙太(在日ファンク)&後藤真希 feat. 黒木華&野呂佳代「おーへい」(日本コロムビア)
制作協力:AOI Pro.
制作著作:カンテレ、MYRIAGON STUDIO
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ginganoippyou/
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