何かを始めるのに『時すでにおスシ!?』なんてことはない! “人生100年時代”の応援歌に

『時すでにおスシ!?』全世代に響く応援歌に

 しかし、思い立ったが吉日。後先考えず、まずは実行してみるのも一つの手なのかもしれない。「その手で続けていれば、いつか自分のために始めたことが、誰かのためにつながることがあるかもしれない」のだから。渚が本当の意味で独り立ちできたのも、みなとが自分の人生を歩み始めたからだろう。スーパーの新店舗で店長をやらないかというオファーを断ったみなとの代わりを務めることになった沼田(平井まさあき)も、スーパー銭湯アイドルならぬスーパーマーケットアーティストとして生きることを決めた崎田(杏花)も、みなとの姿に勇気をもらったからこそ、一歩前進することができた。

 挑戦して無駄だったこと、必要がなかった時期など、一つもないのだ。みなとたちの卒業後の進路はバラバラだけれど、鮨アカデミーでの「こなすのではなく、丁寧に一日一日に向き合っていく」という学びはそれぞれの道に生かされていく。みなとが冷蔵庫に貼り付けたホワイトボードは、以前よりもはるかにたくさんのやりたいことで埋め尽くされていた。美容院でヘッドスパを受ける、ソファーに寝転んでアイスを食べるなどの些細なことから、渚が車掌を務める新幹線に乗って、京都へ行くという大きな夢まで。その一つひとつがみなとの人生を豊かにし、世界中に幸せの輪を広げていく。

 新しいことを始めるのに「時すでに遅し」なんてことはない! というのが、このドラマの出した答えだ。恋愛もそう。京都旅行でチョウチンアンコウを模したチョコレート菓子を見つけたとき、みなとの頭には大江戸の顔が浮かんだ。「旅先でお土産を見て、真っ先に顔が浮かぶ人っていいですよね。自分はこの人のことを本当に大切に思ってるんだなってわかりますから」とは、立石の言葉だ。

 最初は講師と生徒という形で出会い、やがて第二の人生を歩み始めた同志のような関係となっていったみなとと大江戸。その過程で、少しずつ愛情が芽生えていったのだろう。今やお互いに、悩んでいることも嬉しいことも真っ先に共有したくなる大切な相手だ。みなとからお土産を受け取った大江戸は、講師の傍ら準備を進めていた自分の鮨店が来年開店することを明かし、「新しい店に来てくれませんか」と誘う。大江戸からすれば、「一緒に働こう」という一世一代の言葉だったのだが、「客としてお店に来てほしい」という意味に受け取ったみなとはあっさりOK。しかし、いざ開店日に本当の意味を知ったみなとが、大江戸に「先生は不器用すぎます」と呆れつつも、覚悟を決めるところで本作は幕を閉じる。

 永作博美と松山ケンイチが18年前に共演した映画『人のセックスを笑うな』は、過激なタイトルからは想像もつかない、不器用な男女によるひたすらピュアなラブストーリーだった。本作は大きくテイストが異なるものの、おかしくて、かわいらしくて、思わず見守りたくなる大人の純愛を体現した2人。最後まで息の合ったやりとりは、「これからも、みなとと大江戸はカウンターの向こうで一緒に鮨を握り続けるのだろう」という未来を想像させるものだった。

 そして本作を手がけたのは、『マイダイアリー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)で向田邦子賞を受賞し、6月1日からスタートしたNHK夜ドラ『ミッドナイトタクシー』でも脚本を担当している兵藤るり。各世代のリアルな悩みや葛藤を掬い上げつつ、現在29歳の彼女だからこそのフレッシュな視点と遊び心のある台詞やキャラクター設定で、全体を明るく包み込む作劇が見事だった。まさにビタミンドラマという言葉がしっくりくる作品であり、明日へと進む足どりが軽くなったように思う。

■配信情報
火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』
TVer、U-NEXTにて配信中
出演:永作博美、松山ケンイチ、ファーストサマーウイカ、中沢元紀、山時聡真、杏花、平井まさあき(男性ブランコ)、後藤淳平(ジャルジャル)、猫背椿、関根勤、有働由美子、佐野史郎
監督:坪井敏雄、岡本伸吾、金子文紀
脚本:兵藤るり
編成プロデュース:松本友香
プロデュース:益田千愛、鈴木早苗
主題歌:Creepy Nuts「Fright」(Sony Music Labels Inc.)
音楽:青木沙也果
製作著作:TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tokisushi_tbs/
公式X(旧Twitter):@tokisushi_tbs
公式Instagram:tokisushi_tbs
公式TikTok:@tokisushi_tbs

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