『時すでにおスシ!?』が覆したTBS火曜ドラマの定石 “立ち止まる”勇気をくれる温かさ

『時すでにおスシ!?』が火曜ドラマを覆す

 TBS火曜ドラマは、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)をはじめ、『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)や『この恋あたためますか』(TBS系)など、恋愛ドラマで知られる放送枠だ。

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』になぜ誰もが夢中なのか “今”必要な“過去”からの解放

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は古い価値観に縛られた男女の物語。「化石男」勝男が料理や友情で呪縛から解放される一方、鮎美は「自…

 近年は、『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』(TBS系)『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)など、優れた原作の力を借りながら、恋愛だけではなく女性の人生そのものに焦点を当てる作品が増えている。恋愛要素のあるなしに関わらず、生き方や考え方を視聴者にじっくりと訴えかけるようなドラマ枠へと変化してきた。

 そんなTBS火曜ドラマで、2024年以来のオリジナル作品となったのが、『時すでにおスシ!?』。本作は、息子を社会へと送り出した待山みなと(永作博美)が、友人に流されて入学した鮨アカデミーで、第二の人生を歩むことになるヒューマンドラマだ。

 これまでのTBS火曜ドラマヒロインたちの一歩先を行く、子育てを終えた50歳の女性をヒロインに据えたのだ。この切り口からも、女性の人生として描くべきだろうというTBSの矜持を感じる。

 一方で、『時すでにおスシ!?』はみなとの第二の人生だけにフォーカスしているわけではない。暴力事件疑惑により、店主を務める店を閉店に追い込まれた海弥(松山ケンイチ)や、激務の会社員人生を見直そうと決心したみなとの同級生である柿木胡桃(ファーストサマーウイカ)も、鮨アカデミーでの交流を経て、自分を見つめ直すことができた。大学を中退して鮨アカデミーに入学した森蒼斗(山時聡真)は、家族との向き合い方を考えることができ、みなとも鮨アカデミーで出会った仲間のおかげで社会人となった一人息子の渚(中沢元紀)との適切な距離を取れるようになった。

 『時すでにおスシ!?』は、何かの目標に向かって突き進むような分かりやすい物語ではない。むしろ、ちょっと立ち止まりたい、立ち止まらないとこの先頑張れないと思う人たちの物語だった。

 人生の踊り場を迎えた人たちが、世代を超えて対話を重ねることで、次の一歩を踏み出せるようになる。鮨アカデミーはそういう場所だったように思う。

 そして、第二の人生の一つの側面として、TBS火曜ドラマらしさの一つである恋愛要素もきっちり描きこんでいるのが、なんとも嬉しい。

 本作はみなとと海弥がゆっくりと惹かれあっていく様子を、強調しすぎることなく、フラットに描き続けてきた。

 みなとと海弥は、同じ部屋で寝ることになったり、急に顔が近づいてきたり、恋愛作品あるあるな展開があっても、それらが単純に相手へのときめきへと変換されたわけでない。ベタな展開が、みなとと海弥らしいナチュラルで少しズレたやり取りへと昇華されていくことが微笑ましく、むしろ新鮮だ。

 会話を重ね、お互いを知り、助言し合う中で、自然と相手を意識するようになっていく過程はなんとも滋味深く、本作にしかない魅力だった。

 本作の脚本を務めるのは、これまで、『就活生日記』(NHK総合)や『わたしの一番最悪なともだち』(NHK総合)、『マイダイアリー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)など、若者の複雑な感情を、何気ない日常を通してゆったりと描いてきた兵藤るりだ。本作の味わいは、彼女の作家性が生かされたからこそだろう。

 50代のヒロインを主人公に据え、子育てや仕事の先にある人生を描いたこと、じわりと感情を滲ませながら急速には進まない恋愛要素など、総じてTBS火曜ドラマの懐の深さと可能性を感じさせてくれる作品だった。

 人生の曲がり角にポップでやわらかな光を当ててくれた本作は、みなとをはじめとする鮨アカデミーの生徒たちと海弥にどんなゴールを用意しているのだろう。

■放送情報
火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:永作博美、松山ケンイチ、ファーストサマーウイカ、中沢元紀、山時聡真、杏花、平井まさあき(男性ブランコ)、後藤淳平(ジャルジャル)、猫背椿、関根勤、有働由美子、佐野史郎
監督:坪井敏雄、岡本伸吾、金子文紀
脚本:兵藤るり
編成プロデュース:松本友香
プロデュース:益田千愛、鈴木早苗
主題歌:Creepy Nuts「Fright」(Sony Music Labels Inc.)
音楽:青木沙也果
製作著作:TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tokisushi_tbs/
公式X(旧Twitter):@tokisushi_tbs
公式Instagram:tokisushi_tbs
公式TikTok:@tokisushi_tbs

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