『ばけばけ』最終週で近づく“別れの時” ヘブンがトキに告げる“優しい嘘”がもどかしい

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』が、いよいよ最終週に突入した。3月23日に放送された第121話のラストカットは、ヘブン(トミー・バストウ)が骨壷代わりに購入した小瓶越しに見える家族団欒の風景。そこに、フミ(池脇千鶴)の「砂時計かしらね」という声が重なる。どうやら別れの時は刻一刻と近づいているようだ。
かつてヘブンは元妻・マーサ(ミーシャ・ブルックス)が追い詰められていることに気づけず、2人の結婚生活は破綻してしまった。そのことから、たとえ建前であっても嘘を許容できなくなったヘブン。だが、日本の文化や慣習への理解を深めていくとともに建前の美しさを知り、時として自身も誰かのための優しい嘘をつくように。家族に気遣って日本式の生活に合わせる一方で、家族に黙ってこっそりと西洋料理店に通ったり、寒いからと理由付けをして、誰も知らない土地にトキ(髙石あかり)を連れ出そうとしたり。帝大をクビになったことも、家族に心配をかけないようにギリギリまで黙っていた。

この回でも、ヘブンはトキのために2つの嘘をつく。アメリカで出版されたヘブンの最新作『KWAIDAN(怪談)』は評価が芳しくなく、イライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)から送られてきた書評の中でも「残念ながら、子どもだましの民話集にすぎない」と酷評されていた。実際に『怪談』が高く評価され、世界中で読まれるようになったのは著者の小泉八雲が亡くなった後だったようだ。
しかし、アメリカで人気となり、売れ行きも好調とヘブンはトキに伝える。なぜなら、同書はトキが四方八方から集めてきた怪談を、自分の言葉で語り聞かせ、ヘブンが執筆するという二人三脚のスタイルで完成させたものだから。それを否定されたら、トキは落ち込むだろうし、自分の力が足りなかったと己を責めるかもしれない。ヘブンが丈(杉田雷麟)に日本語訳させた本をプレゼントしてもらい、寝る間も惜しんで一人読み耽るトキ。そんな彼女に本当のことなど言えるはずがなかった。

その矢先、胸の痛みに襲われたヘブンはトキを誰もいない部屋に呼び出し、遺言書を渡す。そこには死後、財産をすべてトキに相続させることが書かれていた。続いて、ヘブンがトキに告げたことはほぼ史実通りだ。晩年、狭心症を発症し、もう長くないことを悟った八雲は妻のセツに、自分が死んでも決して泣かず、小さい瓶に自分の骨を入れて、さびしい寺に埋めてほしいと頼んだという。トキはそれを聞いて騒いだり泣いたりしなかった。あまりに突然で、何を言われているのかすらも分からなかったのかもしれない。

ただただ茫然自失と立ち尽くすトキを見て、ヘブンも途端に心配になったのだろう。昼寝から起きてきたヘブンは一転して、トキに「ゴメンナサイ、ママサン。ナオリマシタ」と伝える。それが本当だったら、どれだけよかったか。「もう〜人騒がせな〜!」と安堵から今にも泣き出しそうなトキに、ひたすら頭を下げるヘブン。すべてはトキのために。立ってはいられないほどの痛みを胸に抱えながら、優しい嘘で自分を塗り固めるヘブンの姿はあまりに切ない。
砂時計はきっともうひっくり返された。人間に与えられた時間はあまりに短い。けれど、その短い時間の中で誰かと心を通わせ、手を繋いで歩ける奇跡。あぁ、人生はウラメシ、ケド、スバラシ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK






















