『風、薫る』“ゆき”中井友望の涙が訴える命の尊さ “付かず離れず”の直美×寛太も気になる

NHK連続テレビ小説『風、薫る』第9週「看病婦とアメ」では、りん(見上愛)とフユ(猫背椿)をはじめ、看護婦と看病婦のわだかまりが少しずつ解けていく。不愉快で腹が立つ言動が目立った看病婦にもそれぞれの暮らしや事情、秘めた思いがある。いうなれば、りんと直美(上坂樹里)が康介(じろう)を看ることが、フユに寄り添うということに繋がっていた。

りんと直美は、脚の悪い康介が手洗いに立つことのないように水分を取らないようにしていることに気がついた。人には言いたくても言いづらいことがある。気遣ったつもりが、相手にとっては頼られていないと思うこともある。それがフユと康介の今の夫婦の関係性だ。“なんか”が口癖な康介が「あっ、『なんか』は駄目か」と前向きに訂正する姿に、思わずフユに笑みがこぼれる。康介も久しぶりに見たというフユの笑顔。それを合図に、康介はフユが携わる看病婦の仕事は“なんか”なんかではないと、康介は肯定の言葉を送る。フユにこみ上げる涙。そこで康介が差し出す飴玉は、フユの心を甘く、ほっと融解させていくメタファーのようにも思える。
フユはりんに手術介助を教えてもいいと言い出した。そのことで自身も楽になることにフユは気がついたのだ。りんに向けられた「ありがとう」という感謝の言葉に、手術を終えた後のフユなりの冗談にりんがムキになる姿に対してニヤリと去っていく一枚上手のフユ、といったように、今まで見せたことのなかった明るい一面がどんどん出てくる。いってしまえば、胸糞悪いイメージのまま出番を終えるキャラクターも多い『風、薫る』の中でも、最もツンとデレの振り幅が大きい人物ではないだろうか。

ほかにも喜代(菊池亜希子)の言葉に本心をあらわにしたツヤ(東野絢香)の涙など、看護婦と看病婦の心温まるやり取りが描かれていくが、ここで初めて流れる讃美歌に似た温かな劇伴がりんやフユたち看護婦と看病婦を優しく包み込んでいた。
一方で、直美は吉江(原田泰造)の教会で寛太(藤原季節)と会っていた。夕凪を名乗る母親らしき人物についてだ。寛太が調査した結果、約25年前に夕凪は品川の錦栄楼という店の人気女郎だったが、男と一緒に逃げたという。乳飲み子のときに横浜の教会の前に捨てられた直美。首に掛けられていたお守りには、「浦崎八幡」という神社の木札が入っていた。

直美は病院での実習を通して様々な人に出会うことで、母親がどんな人なのか見てみたくなっていた。「見てどうしたいのか私にも分からない」と寛太にさらなる調査をお願いする直美に、「後悔しても知らねえぞ」と寛太。付かず離れずの直美と寛太の関係性も気になるところだが、ここまでハードルが上がりに上がっている夕凪(村上穂乃佳)の今後も注目ポイントだ。
バーンズ(エマ・ハワード)は「人には向き不向きがありますから。命と向き合う看護の仕事は特にそうです。皆さんもよく考えてください」と生徒たちに話し、そっとゆき(中井友望)を見つめた。担当患者である小野田(宮地雅子)の死期を悟り涙を流すゆき。看護婦にとって、患者の死とは避けては通れぬものだ。もちろんその一人ひとりの命が尊いものであることは言うまでもないが、ある程度の覚悟やタフさも必要であり、看護婦にもそれぞれの生活がある。そのようなニュアンスのことを第1週「翼と刀」の試写会見で、制作統括の松園武大や脚本の吉澤智子が話していたのを思い出すが、第10週「疾風に勁草を」ではゆきと小野田を軸にそのテーマが描かれていきそうだ。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK






















