仲間由紀恵は『風、薫る』の“ターニングポイント”に 手術描写が支える明治期のリアル

NHK連続テレビ小説『風、薫る』第33話(5月13日放送)で描かれた手術シーンが、大きな反響を呼んだ。NHKの公式X(旧Twitter)でもその様子が紹介され、視聴者からは明治期の医療現場のリアルさに驚く声が相次いだ。限られた環境の中で、医師と看病婦たちが命に向き合う姿からは、本作が積み重ねてきた医療・看護描写へのこだわりが伝わってきた。

明治期の医療現場を舞台にした本作では、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)が看護婦を目指し、養成所で学びながら病院の現場へと踏み出していく。第33話で描かれたのは、そうした物語の中でもとりわけ緊張感のある手術の場面だった。園部(野添義弘)の容体が急変したことで、今井教授(古川雄大)は足の傷口の縫合部分を再び処置することになる。画面に映る今井の姿は、現代の手術シーンで思い浮かべる医師像とは大きく異なっていた。白シャツにベスト、腰にはエプロンを着け、マスクも手袋もないまま手術に臨む。その光景は現在の医療を知っている側からすると、到底安心して見られるものではない。むしろ、手術そのものがどれほど危険と隣り合わせだったのかを強く感じさせる。
だが、それが明治期の医療現場のリアルなのだ。今では当たり前のように思える清潔な環境や医療器具の充実、手術を支える体制も、最初から整っていたわけではない。第33話の手術描写は、医療や看護が少しずつ形作られていった時代を、視聴者に強く印象づけるものだった。
今井を演じる古川雄大も、手術シーンについて「繊細な作業が多く、監修の先生方にたくさん指導していただいて撮影に臨みました」と振り返っている。さらに医療器具についても、「初めて見る物ばかりで、使い方も難易度の高いものばかり」と語った上で、「今ほど便利な手術器具はなく人力で補って手術をしているのだなと感じました」とコメント。続けて、「1分1秒を争う手術において執刀医とサポートする看護婦たちの連携やスキルが大切なのだと思いました」とも述べている(※1)。今ほど設備が整っていない現場で、医師はどう手術を進め、看病婦たちはどう支えるのか。その細かな所作まで描かれていたからこそ、視聴者にも当時の手術現場の緊張感がリアルに伝わったのだろう。

制作統括の松園武大は、本作の医療描写について、現代の視聴者に伝わる分かりやすさと、当時の人々の感覚をどう両立させるかをかなり議論したと語っている。「当時の病気に対する考え方と現代の考え方が違う中で、どこまで現代の視聴者に伝わるようにアレンジすべきか、当時の『まだ知らない感覚』をどう表現するかはかなり議論しました」と明かし、看護の現場についても「ただ頑張ったという単純な話ではなく、患者さん本人の問題だけではどうにもならないこともありますし、すべてが完全に解決するわけでもありません」と語っている(※2)。
さらに、医師と当時の看病婦の立場や考え方を分けて描くため、医事考証と看護考証の先生を別々に立て、細かな考証を重ねたという。第33話の手術シーンに当時の医療現場のリアルさがあったのは、病気への向き合い方、医師と看病婦の関係、患者や家族の受け止め方まで含めて、制作陣が丁寧に描こうとしているからだ。

そして第9週では、りんが担当している千佳子(仲間由紀恵)の手術が描かれることになるだろう。千佳子は、最初から病院側に心を開いている患者ではない。周囲に対して反発気味で、看病婦にも簡単には気を許さない。だが、その強い態度の裏には、侯爵夫人として弱さを見せられない立場や、手術を前にした恐怖があることが明かされた。りんにとって千佳子との関わりは、教科書だけでは分からない看護の難しさを知る経験になっている。
松園は、千佳子のエピソードについても「大きなターニングポイントになる」と明かしている(※2)。当時の手術成功率は現在とは比べものにならないほど低く、複雑な事情を抱えた患者に対して、りんと直美がどう向き合うのかが見どころになるという。反発気味だった千佳子が、どのように手術を受け入れていくのか。りんはそのそばで、何を感じ、何を学ぶのか。制作陣がこだわってきた看護描写が、あらためて重要な意味を持つ場面になるはずだ。
参照
※1. https://x.com/asadora_nhk/status/2054342204681011416?s=20
※2. https://realsound.jp/movie/2026/05/post-2382715.html
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK























