八津弘幸が描く下剋上はどう変化した? 『豊臣兄弟!』『半沢直樹』に共通するスピリット

総選挙の前後に放送された『豊臣兄弟!』(NHK総合)第5回、第6回を視聴して、本作は2026年のいま観るべき作品だと確信した。
戦国時代から安土桃山時代にかけて天下統一をなし遂げた豊臣秀吉(池松壮亮)と秀長(仲野太賀)兄弟の絆を描く「夢と希望の下剋上サクセスストーリー」について、詳細な説明は不要だろう。尾張(現在の愛知県西部)の農民の子として生まれ、織田信長(小栗旬)に仕えて頭角をあらわし天下人となった秀吉は、下位の者が上位の者に取って代わる下剋上の代表格として歴史にその名を刻んでいる。

秀吉の偉業の陰に兄を支える弟がいたことは広く知られている。人たらしの魅力と剛腕で突破する兄のそばにありながら、交渉力と知力で争いを止める秀長は、秀吉の良き相談相手であり、誰よりも信頼する右腕と呼べる存在だった。
“剛と柔”のコンビネーションで出世街道をひた走る豊臣兄弟の活躍は、胸のすくような痛快さがあって、日曜の夜を楽しみにしている人も多いだろう。下剋上を中心に据えたドラマは上向きのオーラが画面に漂っていて、観ているこっちまで上昇気流に乗ったような気分になる。
今作の脚本を手がけるのは八津弘幸。最終回が平成の民放ドラマ史上1位となる平均視聴率42.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、「倍返し」の台詞が社会現象となった2013年7月期『半沢直樹』(TBS系)の脚本を手がけた。奇しくも下剋上という点で『豊臣兄弟!』と『半沢直樹』には共通するスピリットがある。
ただし、そのニュアンスは微妙に異なる。『半沢直樹』では、堺雅人演じる銀行員の半沢が、自身や家族を陥れた上司たちに復讐を果たす。仇討ちの要素があり、同時に組織人として身の潔白を証明する意義もあった。個人的な動機に加えて、不正を憎む半沢が汚れきった世の中を成敗する姿が共感を呼んだ。





















