『豊臣兄弟!』第6回は「仲野太賀の芝居を見る回」 制作統括によるキャスティング秘話も

『豊臣兄弟!』松川博敬制作統括インタビュー

 仲野太賀が主演を務める大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合)。豊臣秀吉(藤吉郎/池松壮亮)の弟・秀長(小一郎)を主人公に、戦国時代を駆け抜けた兄弟の絆を描く本作が、第6回「兄弟の絆」でひとつの大きな山場を迎える。

 制作統括の松川博敬氏は、この第6回について「このドラマはこの回を観てもらうために生まれたと言っても過言ではない」と語る。史実に基づいた大胆なアレンジやミステリー要素、そして主演・仲野太賀と織田信長役・小栗旬による魂の演技合戦はいかにして作られたのか。

 第6回の制作背景や作品の根幹にあるテーマ「人を信じる力」への思い、松下洸平(徳川家康役)らのキャスティング秘話、あえて信長の正室・帰蝶を登場させない演出の意図、そして今後の展望まで、松川氏に話を聞いた。(編集部)

第6回は仲野太賀×小栗旬の“魂の演技合戦”に

――第6回の見どころを教えてください。

松川博敬(以下、松川):第6回は本作のテーマである「兄弟の絆」がそのままタイトルになっていて、大変重要な回です。『豊臣兄弟!』はこの第6回を観てもらうために生まれたと言っても過言ではないと思っております。史実に基づきながらも、大胆なアレンジをしていて、真犯人は誰かという謎解きの要素があるミステリー仕立てになっている挑戦の回でもあります。第4回までに関しては、歴史好きの方にも「そうアレンジしたか」と感想をいただいていたのですが、第6回ではさらに踏み込んだ部分があります。我々としてはどういったリアクションが返ってくるのかドキドキしているところです。

――第6回は全話を通しても非常に重要な回になるのですね。

松川:そうなると思います。「『豊臣兄弟』のテーマは何ですか?」とよく聞かれるのですが、実はいつも答えに窮する質問でした。テーマは長い物語のなかで観た人それぞれが発見していくものであり、最初から作り手が正解を提示するべきではないと思っています。「兄弟の絆ですかね」と答えてお茶を濁していたところがあったんですけど、クランクインから8カ月が経った今、この物語が目指すものが何なのか、明瞭に見えてきたことがあります。最近思うのは“人を信じる力”の話をしているのではないかということです。例えば、第4回の「桶狭間!」では、小一郎が藤吉郎は信長が勝つことを信じていた、自分はそれが足りなかったと話します。第6回では豊臣兄弟の2人がお互いを信じる思いが描かれます。本作を作っていると、戦国時代とは、人を信じることでしか前に進めなかった過酷な時代だったんだと感じます。人を信じながらも、時には裏切られて殺されることもある。現在、脚本は「本能寺の変」のあたりを作っているところなのですが、「信長に足りなくて、豊臣兄弟にあったものは何だったのか」を考えているところです。

――仲野太賀さんをはじめとする芝居面での見どころも教えてください。

松川:第6回のラストは、仲野太賀さんの真骨頂が見られる熱の入ったシーンになっています。小一郎が信長から首をはねれる覚悟の芝居は、現場で見ていても鳥肌が立ちました。第6回は“仲野太賀の芝居を見る回”だともいえます。第4回の最後で、信長の弟・信勝(中沢元紀)とのトラウマを回想でチラ見せしましたけど、その事実が小一郎にも知らされます。弟を殺してしまった過去を今も引きずっている信長の生き様を第6回では提示しているので、信長にとっても大事な回です。小栗旬さんも仲野さんに負けない迫力で、その2人が相乗効果で芝居の熱が上がっていくのが、演技合戦と呼ぶに相応しいのではないかと思いました。

小栗旬、松下洸平ら“有名武将”のキャスティング理由

――改めてになりますが、信長役に小栗旬さんをキャスティングした理由はどういった点だったのでしょうか?

松川:信長は信勝を殺してしまったという傷を抱えている。ある種の人間臭さ、弱さというものを表現できて、なおかつ迫力と覚悟みたいなものを両面で表現できる方ということで小栗さんにご依頼いたしました。お気付きのように、豊臣兄弟と織田兄妹は対比になっていて、織田兄妹は信長と市(宮﨑あおい)ですが、その前には信長と信勝の悲しい兄弟関係もある。一方で、小一郎と藤吉郎の幸福な兄弟関係があるという対比にしたかったんです。超然とした大御所の方に信長を演じてもらうという選択肢もあったと思いますが、『豊臣兄弟!』では兄弟の対比がテーマになるということで、小栗さんが適任だったと思っています。迫力があって怖いけど、弱さと親しみやすさが滲み出ているところが小栗さんらしいと思います。

――兄・信長への謀反を企てる信勝を中沢元紀さんが好演していました。

松川:2025年度前期にオンエアしていた連続テレビ小説『あんぱん』が始まる頃にキャスティングを進めていたんですが、中沢さんが演じた千尋の芝居が本当に良かったんです。不憫な弟を演じさせたら、一番じゃないでしょうか。短い出番ではありましたが、事務所の先輩でもある小栗さんを慕っている中沢さんだからこその信勝としての芝居が本当に良かったと思います。

――家康役に松下洸平さんをキャスティングした理由については?

松川:家康は秀吉の後に天下を取りますが、秀長と家康は仲が良かったという史実があるんですね。秀長が家康を大和郡山に招くなど、シンパシーを感じていたんじゃないかという仮説に基づいて、ストーリーを作っています。『豊臣兄弟!』の末路をどう描くかは未定ですが、秀吉が暴君になっていき、病床の秀長が力尽きる時にひょっとしたらその先の世を家康に託すようなことになるのではないかと。そういった意味では小一郎と家康の友情関係を紡いでいくこともイメージしていました。ちょっと変な家康になっていて面白いですよね(笑)。松下さんをキャスティングした時に、自分なりの家康をどのように演じるべきか悩まれていたみたいなんです。それが脚本を読んでからは、このままやろうという感じになったらしく、松下さん本人も満足されているみたいです。

――小一郎の幼なじみ・直を白石聖さんがたくましく、表情豊かに演じています。

松川:今、徐々に火が点いてきていて、いろんなところでおじさま層から支持されているというような話を聞いて嬉しいです(笑)。回を重ねるごとに表現が豊かになっていくんですよね。白石さんは準備期間が短いなかで緊張しながら現場に入られたんですけど、どんどん魅力的になっています。昔の朝ドラのヒロインが成長していくような感覚を、この短い期間に見せていただいている感じがしてとても楽しいです。

――第5回では麿赤兒さん演じる斎藤道三が回想シーンで登場しました。

松川:第1回で斎藤義龍をDAIGOさんに演じていただきましたが、ワンシーンだけど有名な武将のキャスティングがすごく難しいんです。検討していたのはクランクインの山形ロケでの現場に入っていた頃だったのですが、中途半端な人は出したくないというので、麿赤兒さんはどうだろうとダメ元で聞いてみることにしたんです。舞台が終わってからなら出られるということで、数秒の出番でしたけど、インパクトの強い説得力のある斎藤道三になりました。

――今後も、出番は少ないながらも有名な武将というのは出てくるのでしょうか?

松川:それほどはないかなと思いますね。斎藤道三にしても、信勝にしても、過去の回想になるのでなかなか伸びにくい役ではあります。あとは、髙嶋政伸さんが演じる武田信玄でしょうか。

――斎藤道三の娘で信長の正室となる帰蝶が登場しない理由はありますか?

松川:信長と市の織田兄妹を立たせたい狙いがあります。織田兄妹と豊臣兄弟の対比を描いていく上で、信長の孤独が設定としてあり、信長の妻や子供たちが出てきた時に、そこがぼやけてしまうというのがあって、2人きりの兄弟という風に見せたかったんです。市は浅井長政(中島歩)との間に、茶々(井上和)、初、江の三姉妹をもうけますが、そのことで信長はさらに一人ぼっちになっていきます。そこで帰蝶が出てくると、テーマが濁ってしまうかなと思いました。時代考証の先生方にも、「本当にいいんですか?」と言われましたが、それでも『豊臣兄弟!』はこういくんだと覚悟を決めましたね。もちろん信長の息子たちは登場するので、側室も存在はしてるはずなんですけど、ある意味ドライな夫婦関係であるくらいのことでオフにしている。あくまで信長と本音で話せるのは市だけという設定です。

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