『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』と創作を好きでいることの価値 のび助の設定が核に

劇場版『のび太の絵世界物語』と創作の価値

 クレアを送り届けた後、元の世界に戻ったのび太たちだったが、不思議な青色の秘密を手に入れられなかったことから、スネ夫とジャイアンがこっそりアートリア公国に行って命の危機にさらされる。子供が観るアニメでそこまで追い詰めていいの? なんて思いそうなスリリングな展開があり、王宮に入り込んでいた悪党が放った悪魔のような敵と戦うスペクタクルな展開があって、いったいどうなってしまうのかとドキドキさせられる。

 色を抜かれてまるで石のように固められてしまう敵の攻撃に、しずかもスネ夫もジャイアンもドラえもんすらも失って、のび太はどう立ち向かうのか? そこで、のび太と絵の関係が大きくクローズアップされ、絵とは何を描くものなのかといったのび助やマイロの言葉が浮かび上がって、のび太を大逆転へと導いていく。

 どういうことかは映画を観てのお楽しみとして、ひとつだけいえるのは、たとえ落書きのような絵でも、そこにのび太がこめた強くて深い思いが、しっかりと伝わって絵に本物と変わらない力を与えていたのかもしれないということだ。物語の中でそのことに気づかされた心でこれから絵を見る人は、どれだけ本物そっくりかではなく、どれだけパッションが感じ取れるかを気にするようになるだろう。

 物語の必然として、本作にも終わりの時が訪れる。大団円かと思いきや、いろいろと仕込まれていた伏線めいたものが立ち上がって、人によっては涙を誘われるような状況が繰り出される。それと気づいていても泣けるのだから、ようやく分かった人は驚き、場合によっては怒るかもしれない。もっとも、そこは子供が観て楽しめる『映画ドラえもん』のシリーズだ。最後まで観れば笑顔で終わりを迎えられるといっておこう。

 そして最後の最後に、のび助から改めていい絵とは「それが好きだってことがよくわかる」気持ちがこもった絵のことだと語られる。観終わって絵を描きたくなる人もいるだろう。そのときは、正確だとか綺麗だとか上手いといったことではなく、マイロが語りのび助が語ったような「好き」を込めて描いてみよう。

 そんな気持ちにいつか答えてくれるかもしれないから。危機に陥ったのび太を救ったような奇跡が起こるかもしれないから。

■放送情報
『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』
テレビ朝日系にて、2月21日(土)18:30~放送
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2025

■公開情報
『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』
2月27日(金)公開
原作:藤子・F・不二雄
監督:矢嶋哲生
脚本:村山功
音楽:服部隆之
キャラクターデザイン:冨樫友紀
キャスト:水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一、千葉翔也、広橋涼、平子祐希(アルコ&ピース)、酒井健太(アルコ&ピース)、平愛梨
主題歌: sumika「Honto」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:東宝
©︎藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2026
公式サイト:https://doraeiga.com/2026/

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