『あんぱん』高知新報トリオが愛おしい 津田健次郎×倉悠貴×鳴海唯が支えた戦後編

琴子(鳴海唯)

また、鳴海唯演じる琴子も“高知新報編”を語る上で欠かせない人物だ。のぶとともに戦後初の女性記者として『高知新報』に配属された琴子。当初はお茶汲みに徹しており、何を考えているか分からない女性だった。そのため、もしかしたらの意地悪な人なんじゃないだろうかと身構えた視聴者も多いのではないだろうか。
ところが蓋を開けてみたら、まさかの“おっさん女子”。結婚相手を探すのが入社の目的なので普段は猫を被っており、仕事終わりにカストリ焼酎をあおることでストレスを解消している。飲み屋に入り浸っているからか顔も広く、広告主探しに苦戦していたのぶをフォローしたことも。思わず「琴子姐さん」と呼びたくなる頼もしいキャラクターだ。
鳴海の役者としての魅力は“攻め”と“受け”の演技を両方こなせるバランス感覚だろう。コミカルに振り切った酔っ払い演技はもちろんだが、嵩のダメダメな面接の受け答えに呆れているときのスンとした表情や、いつまでも幼なじみ以上恋人未満の関係を続けているのぶと嵩もどかしさを抑えきれていない顔など、リアルとオーバーのちょうど中間を行くようなリアクションが秀逸で物語に笑いどころを作ってくれた。

以前、のぶに結婚相手として岩清水を勧められた際には「あの人は好みやないわ。ええ人やけんど、何か大物になりそうじゃないし」と返した琴子。かたや岩清水は当初、のぶを女性として意識していたように見えたが、彼女の頑張りを目の当たりにして少しずつ尊敬へと変わっていったのではないだろうか。今では琴子とともに嵩の恋を応援しており、2人は案外相性が良さそうに思える。何だかんだ言いながら、いつの間にかくっついている可能性は十分にありそうだ。
第17週からはのぶが高知新報を去り、代議士・薪鉄子(戸田恵子)のもとで働く“東京編”が開幕。東海林は厳しくも温かいエールでのぶを送り出し、琴子と岩清水は今こそ想いを伝えるべきだと嵩の背中を押したが、一歩間に合わず。ただ、のぶと嵩が将来夫婦になることは決まっており、残りの話数を考えると嵩もすぐに東京へ行くことになるだろう。“高知新報編”はコメディタッチで全員が演技巧者ゆえに会話のテンポ感も抜群だったために、ロスに陥るのは必然だ。願わくば物語の舞台が変わっても、折につけて3人のやりとりを覗かせてほしい。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK






















