『ばけばけ』夏目透羽が強烈な新キャラ・クマに “思ってたのと違う”熊本での新生活

『ばけばけ』夏目透羽が強烈な新キャラに

 NHK連続テレビ小説(通称、朝ドラ)では、地方出身のヒロインが夢を追って都会に出るパターンが多い。その意味で、今までヒロインが1つの場所に留まっていた『ばけばけ』は異例ともいえる。しかし、最終回まで残り少なくなってきた第20週でついに舞台が松江から移動。2月16日放送された第96話では、トキ(髙石あかり)とヘブン(トミー・バストウ)が熊本での新生活で「思ってたのと違う」に直面する。

 熊本にきて3カ月が経ち、松野家の食卓も様変わりした。一番大きな変化は人数だろう。これまではトキ、ヘブン、司之介(岡部たかし)、フミ(池脇千鶴)の4人暮らしだったが、そこにヘブンを慕って松江中学校から転校してきた生徒の丈(杉田雷麟)と正木(日高由起刀)、さらには女中のクマ(夏目透羽)が加わり、大所帯となる。当時、西洋化が進んでいた熊本では洋食の材料が手に入りやすかったようで、朝食にもトーストやコーヒーが初登場。実際にヘブンのモデルになった小泉八雲は、熊本転居をきっかけに和食から洋食中心の生活に移行したようだ。

 クマは毎日洋食は嫌だという司之介のために蓮根や、トキの好きなしじみ汁も用意してくれていた。それにもかかわらず、司之介は朝食で出てきた普通の蓮根に「熊本といえば、からし蓮根じゃろう」と怪訝な顔を見せる。さすがは無自覚ノンデリカシー。しかし、クマも負けていない。文句を垂れる司之介から容赦なく蓮根を取り上げ、視聴者の鬱憤を即座に晴らす。

 今回初登場となったクマはカラッとした性格で、観いて気持ちがいい。しかも、働き者で料理も掃除も洗濯も1人でテキパキとこなす。だが、それゆえにトキとフミは手持ち無沙汰のようだ。2人が何か手伝おうとするや否や、「高かお給金ば頂いとっとに、お手伝いばさせたら罰が当たりますけん」と必死に抵抗するクマ。責任感が人一倍強い反面、少し堅いところがある彼女は、熊本発祥といわれる手鞠歌「あんたがたどこさ」でトキとフミが遊ぶことも、“万が一”のことを考えて禁じる。できることといったら、草むしりだけ。働かずとも何不自由ない生活を送れるというのは、多くの人にとって理想だ。しかし、実際にその生活を手に入れてみると、案外空虚でつまらないものなのかもしれない。

 一方、ヘブンもまた熊本での生活に違和感を感じていた。新たに赴任した第五高等中学校での授業中、手がかじかんでチョークを落としてしまったヘブン。教務室も震えるほど寒く、同僚教師の作山(橋本淳)にストーブをつけないかと提案するも、「でしたらご自分で」と突き放されてしまう。作山を演じる橋本は、2025年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)にて浮世絵師・北尾重政役で懐の深い演技を見せたが、今回は一転して高飛車で近寄りがたいオーラを放っている。

 ヘブンが小さくこぼした「熊本は暖かいと聞いていたのに」という愚痴には、「こんなに気温が寒いと思わなかった」「こんなに人が冷たいと思わなかった」という二重の意味が含まれているのだろう。もしかしたらヘブンは松江に初めて降り立ったときのように熊本でも大勢の人から歓迎され、手厚くもてなされることを期待していたのかもしれない。だが、熊本にはすでにロバート(ジョー・トレメイン)という外国人教師がいて、人々にとってヘブンは珍しい存在ではなかった。加えて、古き良き日本の伝統が残っていた松江とは異なり、文明開化を推し進める熊本の風景はヘブンには物足りなく映ったようだ。

 だが、錦織(吉沢亮)がいてくれたら、また感じ方は随分と違っただろう。ヘブンが松江で多くの人から尊敬される存在だったのは、いつもそばにいる錦織が誰よりもヘブンをリスペクトし、自らお手本となって慇懃丁重な振る舞いを示していたからともいえる。それに錦織だったら、熊本でもヘブンが興味を持ちそうな文化遺産を必死に探し出してくれていたはずだ。いつも錦織が座っていた人力車の隣が空席なことにもまだ慣れないヘブン。仕事や家事に追われて大変だけど、張り合いがあって楽しい生活も、自分のことを一番理解してくれている友人も、失ってから気づくのは今も昔も変わらない人間の切ないところなのだろう。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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