『あんぱん』上司役に『プリキュア』犬役も 津田健次郎、2つの“朝”の顔として存在感

津田健次郎、2つの“朝”の顔として存在感

 朝ドラと日曜朝のアニメ、2つの“朝”の顔として津田健次郎の声が存在感を放っている。NHK連続テレビ小説『あんぱん』では、東海林明として主人公・のぶ(今田美桜)を静かに支える上司役を演じ、その重厚な声と落ち着いた佇まいが、画面に確かな重みを与えている。一方で『キミとアイドルプリキュア♪』(ABCテレビ・テレビ朝日系)では、主人公の飼い犬・きゅーたろうの声を担当し、言葉を持たぬ存在に寄り添うような演技で、全く異なる表現のあり方を提示してみせた。一方は理性と責任を体現する存在、もう一方は言葉を持たず音と感情だけで心を伝える存在として。

 同時期に放送されたこの2作品で、津田が演じている役柄はあまりにも対照的だ。けれど、そのコントラストこそが、彼の俳優としての魅力を象徴しているようにも思える。伝統のある実写ドラマと、アニメの動物役。その両方に同じだけの熱量と説得力を持ち込める人は、決して多くはない。

 『あんぱん』で津田が演じる東海林は、新聞社の編集局主任という立場でありながら、若い記者たちに静かに寄り添うような温かさを持った人物だ。その声は、ただ低く響くだけではなく、言葉に重みを与え、相手の心にそっと触れるようなやわらかさがある。のぶを自らの新聞社に採用する際に「責任は俺が持ちます」と語る場面に込められた覚悟や信頼が、声だけでなく、姿勢や間の取り方、視線の動きからも伝わってくる。

 その演技には、津田のこれまでのキャリアがにじんでいる。かつてはアニメの世界で多くの師や悪役を演じ、その存在感を確かなものにしてきた。そして今、実写の世界でも人を導く役が自然と似合うようになったのは、単に年齢を重ねたからではない。彼自身が、役の背後にある“生き方”を丁寧に拾い上げているからだろう。

 だが、『プリキュア』できゅーたろうという犬を演じる津田は、まったく別の側面を見せている。セリフではなく、鳴き声だけで感情を伝えるという難しい役どころでありながら、彼はそこに細やかな工夫と愛情を注ぎ込んでいる。嬉しさ、寂しさ、戸惑いといった人間の言葉を持たない動物の感情を、音の高低や間合い、息づかいのニュアンスで豊かに描き出す。その演技には、彼の“声”が単なる武器ではなく、感情を運ぶ楽器のようなものだと感じさせられる。

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