『この夏の星を見る』“コロナ禍世代”は共感必至 桜田ひよりが体現した“青春のまばゆさ”

本作の特筆すべき点はこのリアリティが生み出す共感にある。5年前、誰もが感じた恐怖や不安を丁寧に描いている。外出しただけで近所の人に白い目で見られたり、県外の人を受け入れているという理由で誹謗中傷にあったりと、パンデミックが生み出した分断を過度に誇張することもなく再現している。
何より“リアル”だと感じたのは、コロナ禍における新しい日常の描写であり、特に着目したいのが、マスクに表れる個性だ。布のものや、ナイロン製のもの。人によって異なるマスク選びも、あの日々を象徴している。印象的だったのは、長崎で「つばき旅館」を営む両親のもとに育つ佐々野円華(中野有紗)が身につけていた、椿をあしらった鮮やかな模様のマスクだ。「親御さんが作ったのかな、それとも手作りなのかな?」と想像してしまう。

一度は意気消沈してしまった学生たち。でも、彼らの強さは転んでもただでは起きない点にある。部活動の再開に燃える亜紗は「スターキャッチコンテスト」のオンライン開催を企画する。このコンテストは、指定された星をどれだけ早く望遠鏡で捉えられるかを競うものだ。
茨城、東京、長崎。離れた場所で過ごす学生たちが、オンライン空間で集い、同じ空を見上げる。コロナによって享受できたはずの青春を奪われてしまった悔しさが痛感できるからこそ、彼らが夢中になって星を探し、仲間とともに一喜一憂する姿はより一層まばゆく見える。

「スターキャッチコンテスト」を終え、笑顔や活力を取り戻した亜紗たち。だが、そこに訪れたのは、凛久の転校と言うあまりにも唐突な知らせだった。新たに降りかかる問題に対し、亜紗はどう立ち向かうのか。オンライン空間が生み出した縁や、宇宙への熱い思いが織りなすこの物語“らしさ”に溢れた結末を、ぜひ劇場で観届けてほしい。
■公開情報
『この夏の星を見る』
全国公開中
出演:桜田ひより、水沢林太郎、黒川想矢、中野有紗、早瀬憩、星乃あんな、河村花、和田庵、萩原護、秋谷郁甫、増井湖々、安達木乃、蒼井旬、中原果南、工藤遥、小林涼子、上川周作、朝倉あき、堀田茜、近藤芳正、岡部たかし
原作:辻村深月『この夏の星を見る』(KADOKAWA)
監督:山元環
脚本:森野マッシュ
音楽:haruka nakamura
配給:東映
©2025「この夏の星を見る」製作委員会
公式サイト:https://www.konohoshi-movie.jp/
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