『めおと日和』“始まり”を見つめ直す“終わり”を徹底分析 日常が続いてほしいという祈り

この約5分近くの「終盤」が示しているのは、まさにその、本作にちりばめられた様々な仕掛けの存在である。恐らく「活動弁士」の役割だったのだろう「視聴者のみが、恋する主人公夫婦それぞれの“心情”を知ることができるという特権」が、いかに雄弁に、互いを思いやり、好きだと感じる気持ちの素晴らしさを物語ってきたか。夫婦の実際の会話や行動以上に、2人が互いのことを思う故に勘違いしたり、「妄想が暴走」したり、全く同じことを考えていても敢えて遠慮したり恥じらったりして言葉にしなかったりすることを「特別に観察できる」ことそのものが、まるで第6話の深見(小関裕太)と芙美子(山本舞香)による「アベックのランデブー」を変装して見守りにきた瀧昌・なつ美を、逆に深見と芙美子と視聴者が見守らずにはいられないことと同じように、視聴者の心の「彼ら彼女らをずっと観ていたい」欲に火をつけたように思う。
そして彼ら彼女たちの日常は、「永遠に続かないかもしれない」という残酷な予感のもとに成り立っているということ。例えば第9話で深見と芙美子が興じる「線香花火」や、瀧昌となつ美の「わが家の恒例行事」である「ホタルを見る」といった光景が、それぞれの日常を美しく煌めかせると同時に、儚さを感じさせるように。

現代の視聴者から見ると本作の時代設定が「昭和11年」であることから、いつか訪れる「戦争」という過酷な未来を想像せずにはいられないこともある。遠い未来の話をすると不安そうな顔をする、いつ戦地に駆り出されて命を落としてもおかしくない帝国海軍の中尉である瀧昌と、夫の職業柄、限られた時間しか共に過ごせないなつ美の、だからこそ「1時間が、1分が、1秒が、特別で大切だから、短くてなが~い」のだと思う気持ち。それらすべてが、活動弁士が言う通り「日常の小さな幸せ」をより「きらめくように輝」かせている。
だからこそ一見変わらない日常は、小さな喜びに満ちていて、彼ら夫婦・恋人たちの日々がこれからもずっと続くだろうことがこんなにも嬉しい。そしてそれは、私たち自身の平穏な日常がこの先ずっと続いてほしいという祈りとなって、視聴者のそれぞれの日々に降り注ぐのである。
西香はちによる同名コミックを原作としたハートフル・昭和新婚ラブコメ。昭和11年を舞台に交際ゼロ日婚からスタートする、歯がゆくも愛らしい“新婚夫婦の甘酸っぱい時間”を丁寧に描く。
■配信情報
『波うららかに、めおと日和』
TVer、FODにて配信中
出演:芳根京子、本田響矢、山本舞香、小関裕太、小宮璃央、咲妃みゆ、小川彩(乃木坂46)、戸塚純貴、森カンナ、高橋努、紺野まひる、生瀬勝久、和久井映見ほか
原作:西香はち『波うららかに、めおと日和』(講談社『コミックDAYS』連載)
脚本:泉澤陽子
音楽:植田能平
主題歌:BE:FIRST「夢中」
プロデュース:宋ハナ
演出:平野眞
制作協力:FILM
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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