“『めおと日和』ロス”を埋める芳根京子の出演作5選 『表参道高校合唱部!』『累』など

『めおと日和』ロスを埋める芳根京子の出演作

 『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)の最終回が放送され、視聴者の間ではすでに“めおと日和ロス”が広がっている。恋に不慣れな男女が少しずつ愛を育む昭和初期の物語は、現代の喧騒から切り離されたような、穏やかで優しい時間を与えてくれた。

 中心にいたのは、芳根京子演じるなつ美。夫の裾をそっと引く仕草、はにかむような笑顔。その一つひとつの動作に、あざとさではなく誠実さを宿らせたのは、演技への徹底したアプローチゆえだろう。だがなつ美は、芳根のほんの一側面に過ぎない。彼女は、無垢と狂気、動と静かといった相反する感情を自在に引き出せる稀有な俳優だ。

 本稿では、“『波うららかに、めおと日和』ロス”に効く5つの処方箋と題して、彼女の代表作を振り返ってみたい。

『表参道高校合唱部!』

 芳根の原点と言えるのが、2015年に放送されたドラマ『表参道高校合唱部!』(TBS系)ではないだろうか。オーディションで1000人以上の中から選ばれ、連ドラ初主演を果たしたこの作品で、彼女は香川から上京してきた転校生・真琴を演じた。合唱を愛する真琴は、廃部寸前の合唱部を立て直そうとする。クラスメイトや教師を巻き込み、問題を抱える人々の心を歌でほぐしていくその姿は、まっすぐすぎて危ういほどだ。それでも視聴者の心に響いたのは、芳根の演技が押しつけがましくないからだろう。ひたむきさと明るさが、不器用さや痛みを抱えたまま放たれるからこそ、説得力を持ったのだ。この作品で彼女は第1回コンフィデンスアワード・ドラマ賞・新人賞をはじめ、数々の新人賞を受賞し、次世代の俳優としての一歩を踏み出した。

『べっぴんさん』

 NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』(2016年度後期)では、戦後の日本で子ども服ブランドを立ち上げた坂東すみれの半生を演じた。「なんか……なんかな……」という口癖に象徴されるように、すみれは自己主張が強い人物ではない。それでも彼女は、大切な人々や未来のために静かに、しかし確実に前に進み続ける。ヒロインとしては地味なキャラクターではあったが、感情を爆発させず、視線や息遣いだけで想いを伝える、芳根の演技は派手ではないが、その肌触りの良さが、作品世界に深みを与えた。この役で確立されたヒロインのイメージは、後のキャリアにおいても基盤となっていった。

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