“予想を大きく超えてきた”北川景子の芝居 『あなたを奪ったその日から』制作陣が語る秘話

『あな奪』最終話には「登場人物全員の結末がちゃんとある」
ーー今作では、若手俳優が何人も起用されています。阿部亮平さんと小林虎之介さんの起用理由を教えてください。
水野:小林さんについて、私は『下剋上球児』(TBS系)で認識していいなと思って、その後、『宙わたる教室』(NHK総合)も観ました。両方とも、なんとなくやさぐれている役なんですよね。でも、すごく良い子なんだろうなというのが、見てわかるというか。私は、小林さんのマネージャーさんと仲が良いのですが、話を聞くと、案の定というかすごくピュアで、とても好青年だそうで……。いつかご一緒したいなと思っていて、実際に期待をまったく裏切らない感じでした。
ーー視聴者から、小林さんの既婚者設定の役柄は今作が初めてという指摘もありました。
水野:はい。初めてと言っていました。この設定にもこだわりがあって、中学生くらいの女の子って、年上の人を好きになったときに結婚しているかどうかを絶対考えるし、気にするんですね。中学生からすると結婚は遠い話ですけど、最初の恋が永遠だと思ってしまうのは“中学生あるある”のつもりでした。
三方:こちらの計算でもあるのですが、車掌の白い手袋が結婚指輪を隠していて、わからなかったですよね。阿部さんについては、玖村という役は、第1話で登場したときは真面目な大学生だけど、そこから社会の隅っこにいるような人になってしまうという役どころは、視聴者の入り口として分かりやすいですよね。阿部さん自身、クイズが得意でスマートなイケメンという点で、当初の玖村がシンクロしている役というのが、まずありました。玖村はその後、どんどんおかしくなっていく。若干意地悪かもしれませんが、やさぐれる阿部さんを観てみたいという、期待を込めて阿部さんにオファーしました。阿部さんは声がすごく良いので、あの声にも惚れています。
ーー玖村のキャラクターはドラマ全体の敷居を下げていて、玖村のおかげで、私たちも同じ目線で作品に入っていけると感じます。
水野:玖村はこだわりの役でした。復讐もので言うと、全然関係ないのにとばっちりを受ける人がいるんですが、そういう人物を絶対に入れたいと思っていて。結城家の家庭教師になる設定は、一番自然な形で事件が起きた時に家にいて、隠蔽の話をたまたま聞いてしまう役として入れたのですが、“自動販売機の補充員”という設定は、私の知人から聞いた話を元にしています。保育園に自動販売機を置いておけば、紘海との接点が生まれるので、使わせてもらいました。
ーー今作はサスペンス調の演出で、それを感じさせるのが劇伴のメインテーマです。いつも絶妙なタイミングで流れますが、これは意図的なものでしょうか?
水野:狙っています。メインテーマにはいくつかのバージョンがあって、ピアノのソロや、ヴィオラがメインのもの、スローなバージョンもありますが、メインでかかっているバージョンが一番盛り上がるんですよね。流れた瞬間に「来た!」と思うんです。選曲の方が別のバージョンを当てている時も、メインのバージョンに代えてもらったこともあります。
三方:劇伴のタイミングに関しては、みんなで相談しながら、試行錯誤してやっています。音楽はドラマの構成要素の中で一番大切、と言ったら言い過ぎですけど、最後の仕上げとして作品を包むものなので、かなり繊細に取り組んでいます。
ーーback numberさんの主題歌「ブルーアンバー」は、今作のテーマと重なってくると思いますが、事前にどんなお話をされましたか?
水野:テーマに通じる「万華鏡」というキーワードはお伝えしましたが、曲を作っていただく前にほぼ台本ができていて、それを読んでくださった上で作っているので、本当にぴったりな曲ができたと思います。
三方:タイトルの「ブルーアンバー」は、当てる光によって色が変わる鉱物、琥珀なんですね。今作のテーマの一つでもある、「人の心は万華鏡」ーーつまり人は見た目ではわからなくて、別の角度から見えれば違う面が見えてくる、というところにも着想を得て、当てる光によって色が変わるブルーアンバーを採用されているんですけど、それもクリエイティブがシンクロしていいなと思います。back numberさんなりの解釈が本当に素晴らしいです。
ーー今作が復讐ドラマを意識しているというお話が先ほどありました。『半沢直樹』(TBS系)や『梨泰院クラス』(Netflix)など、復讐ドラマは前半と後半で舞台設定が変わることがあります。今作で、紘海が「スイッチバック」に中途入社するのは、意識的に変えている部分でしょうか?
水野:どちらかと言うと必然ですね。遠隔で復讐することも考えたんですけど、物語を転がすために、紘海と旭を接触させようとして、近くに行かせたいと思いました。そこで本当の旭を知って、紘海が後悔し、苦悩する後半がこのドラマの真髄だと思うので、そのためにどうしても近づける必要がありました。
ーー今作のサスペンスタッチだったり、復讐ものの要素から、『火曜サスペンス劇場』(日本テレビ系)や昼ドラ、韓流ドラマのエッセンスを感じますが、それらの影響はありますか?
水野:私は火サスと昼ドラや韓流で育ったので、染み付いちゃっているんだと思います(笑)。韓流は、今では観ている人も多いですが、昼ドラもよく観ていて、『真珠婦人』(東海テレビ・フジテレビ系)や『愛の嵐』(東海テレビ・フジテレビ系)のようなものが好きなので、展開上すごいことが起きないと、ちょっとやそっとじゃ物足りないんですよ。“何気ない日常”みたいなものを描くことは私の中でないです。
三方:連続ドラマにはホームドラマもありますけど、『週刊少年ジャンプ』もそうですが、来週、絶対に観なきゃいけないものを、我々はお届けしなければいけないわけですから。『半沢直樹』(TBS系)みたいに強烈なキャラがいるかはわからないですけど、次回も絶対に観てもらうという点では、物事が起き続けないとダメですね。ちなみに僕も『火曜サスペンス劇場』は大好きです。
ーーいよいよ最終話ですが、旭は望月に萌子の13歳の誕生日である11月17日まで捜索を依頼していましたが、この日がドラマ上もクライマックスになると考えてよいでしょうか?
水野:はい。誕生日はとても重要です。
三方:僕と同い年の友達も観てくれていて、昨日急に連絡が来て「お前、観てたんや」って驚いたんですが、最終話の結末を言い当てていました。選択肢は限られているんですけど、紘海も旭も美海のことを大切に思っていることは間違いないので、美海が不幸になるような未来には、あまりしたくないと思っているはずです。そこで親としてどうするかですね。
ーーその上で、最終話の見どころを教えてください。
水野:親子のドラマだけでなく、登場人物全員の結末がちゃんとあるので、そこも注目してもらいたいです。玖村もまだまだ見せ場があります。
三方:2つの家族という意味では、美海を中心とした話になって来ざるを得ないと思うので、2つの家族が迎える結末と美海に注目してもらいたいです。
水野:今作が直接ヒントにした作品はないんですが、強いて言うなら『北京ヴァイオリン』という中国映画をちょっと意識していて、それがヒントになるかもしれません。
ーー最後の質問です。本作は“正しい人”が出てこない作品だと思います。あえて言えば、玖村は巻き込まれているだけで、他の人はみんな道を踏み外しているのに、それに気づかないふりをして生きているように見えるんです。生きていく上での正しさについて、どのように考えていらっしゃいますか?
水野:みんな失敗しているんですけど、悪い人は1人もいないですし、全員が善人ではあるけれど、やり方を間違えているんです。紘海にしても、旭もそうなんですけれども、子を思うあまりの失敗だったり。そんな中で私は、玖村がいちばん人間的だと思います。
三方:みんな人間らしいし、そこはそれでいいんじゃないかと思います。正義のヒーローばかりじゃないし、清廉潔白に生きてきた人ばかりじゃないのが世の中なので。そういう意味で、今作の登場人物は、江身子(鶴田真由)も含めて、非常に人間らしいです。失敗しているけど、それでも一生懸命生きているし、何かのせいにすることなく、誰かのことを思って日々を送る姿は人間らしいし、美しいと思います。
水野:全員が好きだと思える人ですね。
サスペンスフルなストーリーの中で生まれる親子愛を描く物語。『アルジャーノンに花束を』(TBS系)、『砂の塔~知りすぎた隣人』(TBS系)の池田奈津子が脚本を手がける。
■放送情報
『あなたを奪ったその日から』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~22:54放送
出演:北川景子、仁村紗和、平祐奈、阿部亮平(Snow Man)、水澤紳吾、小川李奈、一色香澄、田山由起、内藤秀一郎、原日出子、鶴田真由、大浦龍宇一、中原丈雄、筒井道隆、大森南朋
脚本:池田奈津子
演出:松木創、淵上正人、本間利幸、大﨑翔
企画:水野綾子
音楽:村松崇継
主題歌:back number「ブルーアンバー」(ユニバーサル シグマ)
プロデューサー:三方祐人
制作:カンテレ、共同テレビ
©︎カンテレ
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