『あんぱん』は朝ドラ初心者にも観やすい? “やなせたかし”の強さと革新的な15分

『あんぱん』は朝ドラ初心者にも観やすい?

 とはいえ、『あんぱん』が特別に実験的な作品かというと、そうでもないだろう。のぶが女性としての生きづらさを感じる描写も、家族とのドタバタ劇も、むしろ“朝ドラらしさ”の王道だ。でも、それだけでは終わらない。「ヒロインの人生のあれこれ」で視聴者の共感を誘いながら、物語全体としては明確な主題に向かって歩んでいく。定番のフォーマットを踏襲しながら、きちんと新しい地平を目指している。ここが、これまで観てきた作品との大きな違いだった。

 そして、『アンパンマン』を作った“やなせたかし”という圧倒的に強い「骨組み」が存在しているからこそ、物語のブレがない。毎日15分の積み重ねが、しっかりと一本の幹に繋がっていく。その安心感が、視聴を支えてくれているように思う。

 朝ドラを途中でやめてしまうことが常だった自分が、いま『あんぱん』を毎朝楽しみにしている。そして戦争編が終わり、物語は終戦後の混乱へと進もうとしている。朝ドラ視聴では、こうした切り替えのタイミングで離脱してしまうこともよくあることだが、少なくとも筆者はまだ“観たい”と思っている。朝ドラらしさと革新性。その絶妙なバランスが、視聴者の「完走」を自然なものにしてくれている。

 朝ドラをなかなか完走できないという人や、特に筆者のような男性視聴者にこそ観てほしい。『あんぱん』は最後まで観たいと思わせる力があり、そして「朝ドラならではの良さ」というものを、きっと実感として得ることができるだろう。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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