二宮和也は『あんぱん』のワンシーンでなぜ心を掴めた アイドルとして培った哲学を紐解く

二宮和也が『あんぱん』で心を掴んだ理由

 NHK連続テレビ小説『あんぱん』の第59話が大きな話題を呼んでいる。

 国民的アニメ『アンパンマン』を生み出した漫画家・やなせたかしと、その妻・小松暢が夫婦で生きた激動の時代をモデルに描いており、第59話は主人公・嵩(北村匠海)が中国の戦地で空腹のため生死をさまよった際、枕元に“ある人物”が現れる驚きの展開となった。

 その“ある人物”とは、嵩が幼い頃に亡くなった父・清。二宮和也が演じるこの役は、これまではほとんど回想シーンで静止画の登場だったが、この日はついに“動く父”として姿を現した。時間にして4分ほどだったが、SNSでも「ワンシーンで全部持って行った」「イマジナリー清に泣いた」などの話題となるほど、二宮の演技は圧巻だった。

『あんぱん』二宮和也が放つ言葉の圧倒的な説得力 清が嵩に“生きる意味”を託す

補給が絶たれ、食料も尽きた過酷な状況の中で、嵩(北村匠海)は極限状態に陥っていく。『あんぱん』(NHK総合)第59話では、仲間の…

 制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサーは「現場で生まれる化学反応があり、“間”も含めてなるべく現場で起きているリアルなこと、言葉をカットせずにありのまま放送に出したかったのです。まるで生中継のように、我々の目の前でそれが起きているかのように」と、異例の「オープニング映像&主題歌なし」を採用(※1)。“ありのまま出したい”と思わせたのは、清を演じた二宮和也によるところが大きいのだろう。

 二宮は、1999年に結成されたアイドルグループ・嵐のメンバー。俳優としても初期から活動しており、2003年には映画『青い炎』で単独主演、そして『硫黄島からの手紙』(2007年)でハリウッドデビューを果たし、『母と暮らせば』(2015年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。

 嵐が2020年5月に活動休止して以降、“俳優・二宮”がより活性化。映画『ラーゲリより愛をこめて』(2022年)、『ブラックペアン シーズン2』(2024年/TBS系)では主演を務め、『インフォーマ』(2023年/ABEMAオリジナル)や映画『【推しの子】 -The Final Act-』(2024年)にも出演するなど、地上波・映画・配信とジャンルを問わずに存在感を発揮するなど、その活躍ぶりはまさに八面六臂。

二宮和也が“続編”で与えた衝撃 『【推しの子】』『インフォーマ』で披露したダークな二面性

2024年のクライマックスは、完全に二宮和也に持っていかれた印象がある。おそらくこう感じているのは私だけではないと思う。いや、断…

 もはや「二宮が出演している作品なら信頼できる」と、“俳優・二宮和也”としての存在感は十分。しかしそれだけにとどまらない。バラエティでの瞬発力、状況判断力、場を回す力にも定評があり、『ニノさん』(日本テレビ系)、『ニノなのに』(TBS系)の地上波でのレギュラー番組のほか、2021年に開設したYouTube『よにのちゃんねる』の登録者数は、なんと490万人を超えている。

 二宮はなぜこんなにもマルチに才能を発揮し、活躍し続けることができるのだろうか。

 6月17日に出版された初めての新書『独断と偏見』を読むと、20数年“アイドル”として培ってきたものが二宮のベースにあることがわかる。それは“人に喜んでもらう”がゴールであるということ。 “自分が何をどうすれば求めてくれる人の熱量を上げることができるかを考えること”を常に意識し、自分だけが前に出るということは決してない。それが“二宮に任せて安心”の功績を生むことにつながっている。

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