『良いこと悪いこと』になぜ誰もが夢中になったのか 考察ブームを加速させた大胆な仕掛け

『良いこと悪いこと』になぜ誰もが夢中に?

 さまざまな考察要素と真犯人を匂わす謎を物語に潜ませながら、決して消えることのない加害者の罪と被害者のトラウマに真正面から向き合ったドラマ『良いこと悪いこと』(日本テレビ系)が完結した。

 22年前に校庭に埋めたタイムカプセル。小学6年生のときに同じクラスだった同級生たちが久しぶりの再会に沸き立ち、幼き頃に思い描いていた将来の夢に思いを馳せたのも束の間、高木(間宮祥太朗)を始めとした6人の顔が黒く塗り潰された卒業アルバムを発見する。

 その後、次々と該当するクラスメイトが命を狙われるなか、いじめを率先して行っていた加害者である高木と、彼らからいじめを受けていた被害者側である園子(新木優子)は協力して、連続殺人事件の真犯人を見つけ出そうと奮闘する。しかし、遺恨を残す2人がタッグを組んで真犯人を探し出す筋書きかと思いきや、そもそもの前提が覆る出来事が何度も発生する事態に驚きを隠せない。

 第6話では、いじめの被害者だった園子が、間接的な加害者として小林(藤間爽子)に糾弾され、「良い子」と「悪い子」の立場が逆転した。さらには、小学生時代にいじめを受けていたのは、園子1人だけではないことも発覚する。存在すらも綺麗さっぱり忘れていた高木たちのさらなる罪が掘り起こされていくなかで、善悪だけでは推しはかることのできない人間の多面性がキャラクターの陰影として、くっきりと映し出されていくのも本作の魅力のひとつだ。

 それでも、物語の主人公である高木に関しては、最後の最後まで一貫していじめの加害者として描ききる覚悟を感じた。毎話、冒頭から凄惨ないじめの様子を生々しいほどに映し出すことで、高木が自身の罪と向き合おうとする過程を過度に美化することなく、最終話で提示されるメッセージにすべての思いを託す。その積み重ねがあるからこそ、高木がカメラの前で語った言葉には、綺麗事では終わらない切実な当事者の重みが生まれたように思う。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる