『薬屋のひとりごと』『九龍GR』ヒットの背景 中華風ファンタジーが女性を惹きつけるワケ

中華風ファンタジーと“溺愛”系作品ブーム
一方で近年の中華風ファンタジーは、元々の人気に加え、“溺愛”系作品ブームとの結びつきによって、女性向けジャンルとしての存在感をさらに強めている。
Web発の恋愛小説や漫画を中心に、「冷酷な皇帝が主人公にだけ心を開く」「寡黙な将軍が不遇なヒロインを守り続ける」といった構図が支持されており、階級社会の厳しさや立場の不安定さは、こうした極端な愛情表現がより切実に響く舞台として機能している。表向きは冷徹な権力者が、ふとした瞬間にだけ見せる優しさや庇護。そのギャップに心を動かされる“ギャップ萌え”は、このジャンルと特に相性が良い。
中華風ファンタジーは、ビジュアル面での魅力も大きい。長く揺れる袖や精緻な刺繍、玉飾りの髪飾りや繊細な調度品といった中華風の意匠は、アニメや漫画の演出によく映えるからだ。美しく作り込まれた世界のなかで、登場人物たちの感情の揺らぎが丁寧に描かれることで、“幻想”としての中華風ファンタジーはその力をさらに増していく。
『薬屋のひとりごと』のように知性で王宮を渡り歩く物語も、『後宮の烏』のように幻想と人の痛みを重ねる作品も、そして『九龍ジェネリックロマンス』のように失われた風景への郷愁を描く物語も。いずれも“ファンタジー”というレンズを通して、私たちがどこかで見たいと願っている世界のかたちを映し出している。
異国でありながら、どこか身近に感じられる空気。厳しい制約のある環境のなかでこそ、際立つロマンス。日本における中華風ファンタジーの女性人気は、そうした“縛られた美しさ”と“気高い芯の強さ”への憧れが重なり合った、ひとつの理想の投影先なのかもしれない。
眉月じゅんの同名漫画をアニメ化したミステリーラブロマンス。ノスタルジー溢れる街・九龍の不動産屋で働く鯨井令子は、失くした記憶、もう1人の自分の正体、そして九龍の街に隠された巨大な秘密と向き合っていく。
■放送情報
TVアニメ『九龍ジェネリックロマンス』
テレ東系にて、毎週土曜23:00~放送
キャスト:白石晴香(鯨井令子役)、杉田智和(工藤発役)、置鮎龍太郎(蛇沼みゆき役)、坂泰斗(タオ・グエン役)、古賀葵(楊明役)、鈴代紗弓(小黒役)、河西健吾(ユウロン役)
原作:『九龍ジェネリックロマンス』眉月じゅん(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載)
監督:岩崎良明
シリーズ構成・脚本:田中仁
キャラクターデザイン:柴田由香
美術監督:金子雄司
OP主題歌:水曜日のカンパネラ「サマータイムゴースト」
ED楽曲:mekakushe「恋のレトロニム」
アニメーション制作:アルボアニメーション
製作:「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
©眉月じゅん/集英社・「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会
公式サイト:kowloongr.jp
公式X(旧Twitter):kowloongr_jp
公式Instagram:kowloongr_jp
公式TikTok:kowloongr_jp























