『めおと日和』最終話直前で訪れた“悲劇” 芳根京子&山本舞香が体現する妻としての器

『めおと日和』最終話直前で訪れた“悲劇”

 しかし、深見もまた一生添い遂げる約束をできない立場にある。「もし僕が死んだらどうします?」という問いかけは、サラリとした口ぶりとは裏腹に重たい。こういう時、普通は「そんな悲しいこと言わないで」とか「あなたが死んだら跡を追うかも」と答えがちだ。でも、芙美子の返答は「もしそんなことがあれば、別の人生を考えるだけです」というさっぱりしたもの。それは一見冷たく聞こえるかもしれないが、深見に気を負わせまいとする芙美子なりの愛なのだろう。深見に「お前はいつも説明が足らない」と言われて自分が思っていることを正直に伝えた瀧昌に、なつ美も「私は一人で産む覚悟はできています」とまっすぐな目で告げる。

 どちらも軍人の妻としての覚悟から出てきた言葉ではない。大病が原因で子どもを望めない体になってしまった郁子(和久井映見)に、「子どもが欲しいのではなく、あなたとともに歳を取りたい」とプロポーズした邦光(小木茂光)と同じだ。毎日「おはよう」と「おやすみ」を言い合えること、子どもの成長をともに見守ること、一緒に老いていく未来を当たり前に想像できること。いわゆる世間一般の幸せは望めないかもしれないが、そんなのはどうでもいい。なつ美は瀧昌を、芙美子は深見をただ愛しているからそばにいたいだけで、そのためならいくらだって強くなれるのだった。

 でもよく考えてみれば、彼らに限らずパートナーがいる人は常にその人を失うリスクはある。未来に保証なんてない。だから、大事なのは未来に一喜一憂するよりも今ある幸せを後悔なく味わい尽くすことだろう。なつ美は瀧昌と蛍の光を、芙美子は深見と線香花火の光を眺めながら小さな幸せを噛みしめる。だが、どちらも短い時間の中で燃え尽きる儚い光だ。

 昭和12年、戦争の音が刻一刻と近づくなか、海軍艦が国籍不明の船と衝突。応援要請を受け、現地に駆けつけた瀧昌と深見の乗る戦艦が消息を断つ。活動弁士が言う通り、当時多くの愛し合う人々が戦争によって無残にも引き裂かれた。そんな哀しい現実を戦後80年の今、しっかりと胸に受け止めながらも、瀧昌となつ美、深見と芙美子が無事に再会できることを願わずにはいられない。

『波うららかに、めおと日和』の画像

波うららかに、めおと日和

西香はちによる同名コミックを原作としたハートフル・昭和新婚ラブコメ。昭和11年を舞台に交際ゼロ日婚からスタートする、歯がゆくも愛らしい“新婚夫婦の甘酸っぱい時間”を丁寧に描く。芳根京子の俳優デビュー作『ラスト♡シンデレラ』(フジテレビ系)を手がけた平野眞が演出を担当する。

■放送情報
『波うららかに、めおと日和』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:芳根京子、本田響矢、山本舞香、小関裕太、小宮璃央、咲妃みゆ、小川彩(乃木坂46)、戸塚純貴、森カンナ、高橋努、紺野まひる、生瀬勝久、和久井映見ほか
原作:西香はち『波うららかに、めおと日和』(講談社『コミックDAYS』連載)
脚本:泉澤陽子
音楽:植田能平
主題歌:BE:FIRST「夢中」
プロデュース:宋ハナ
演出:平野眞
制作協力:FILM
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/meotobiyori/
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