『めおと日和』最終話直前で訪れた“悲劇” 芳根京子&山本舞香が体現する妻としての器

太平洋戦争前夜の日本が舞台になっている時点で、いつかこんな日が来るのではないかと、どこかで覚悟していた。しかし、いざその時が来ると受け止め難く、活動弁士(生瀬勝久)の語りに胸の糸が締めつけられる。
「戦争という大きな波は一人ひとりの小さな幸せをあっという間に飲み込んでしまいます。数多の愛し合う人々がその大波によって引き裂かれ、離れ離れになりました」
最終回を目前にした 『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)第9話のラストには、幸せな2組のカップルに急転直下の悲劇が待ち受けていた。

夫婦とは、未来を共に創っていくパートナーだ。多くの夫婦がどんな家で暮らすか、子どもは何人欲しいか、老後はどのように過ごしたいか……など、折につけて話し合いながら人生を設計していく。そこにあるのは“希望”だが、なつ美(芳根京子)と瀧昌(本田響矢)、芙美子(山本舞香)と深見(小関裕太)の場合は違っていた。「先がいつなくなってもおかしくない仕事」に就いている瀧昌と深見は未来の話をする時、いつも少しだけ寂しそうな顔をする。
なつ美が瀧昌に子どもの話を持ちかけた時もそうだ。普段はどんな話にも真剣に耳を傾けてくれる瀧昌が初めて「やめましょう」となつ美の言葉を遮り、背中を向ける。原因は、なつ美の二番目の姉・あき奈(咲妃みゆ)の出産に立ち会ったことだった。

夫が仕事で不在の中、長時間の痛みに耐え、無事に子どもを産んだあき奈を見てなつ美は「自分の時は……」と想像する。瀧昌は仕事柄、数ヶ月家を空けることも多いため、おそらくなつ美が出産する時は一人。なおかつ子どもが生まれても、海の上にいたら、あき奈の夫のようにすぐに駆けつけることはできない。
不安がないわけではなかった。けれど、妻が出産の時、そばで支えることだけが愛じゃない。離れていても、母子ともに無事の出産を祈ることもまた愛だ。出産部屋と襖一つ隔てた廊下で自分ごとのようにあき奈を心配する瀧昌を見て、「この人の子どもがほしい」と改めて感じたなつ美に対し、瀧昌はなつ美が大切だからこそ一人で痛い思いをさせたくないと思ってしまう。それどころか、もしも自分に何かあったら、子どもの誕生や成長の喜びも一緒に分かち合うことができない。愛する人に、幸せな未来を約束してあげられないというのは耐え難い苦しみなのだろう。

それはきっと深見も同じだ。お見合い話がとんとん拍子で進む中、芙美子の妹の蓉子(白山乃愛)と弟の柊一(石塚陸翔)と顔合わせをすることになった深見。姉を心配する2人の厳しい追及にも涼しい顔で対応し、「芙美子さんと会ってから他の女性がマネキン人形のように思えてね。君たちのお姉さんは罪深い人だよ」とキザだけど本心からの言葉で芙美子の頬を赤らめさせる。
そんな一見、完全無欠の深見も芙美子に寄ってきた蜂を追っ払う時は必死な表情に。でも、決してそういう顔は見せようとしない深見のかっこつけなところも理解した上で、さりげなく立ててあげる芙美子。まさに理想の関係であり、2人なら幸せな家庭を築いていけると確信した。