“異色だらけ”の『イグナイト』が貫いた“逆”の美学 ちりばめられた王道の展開が輝く構成に

また、本作は通常のリーガルドラマに登場する原告側とは“逆”の事情や感情を持った人たちに焦点を当てている。第8話では、病院の看板ドクターである脳外科の名医に脳動脈瘤の手術を受けた父が、一時は回復したものの、その2日後に亡くなったことに疑問を抱いている住(堀田茜)が依頼人となる。住は手術を担当した医師と病院を訴えることを母親に話すのだが、母親は反対。自分の夫が亡くなったことは受け入れ難いが、「ほかの病院で難しいと言われた手術を先生がやってくれた」「先生は頑張ってくれたのに、訴えるのは恩を仇で返すようなこと」というのだ。このように本作で宇崎たちが焚き付けるのは、自分にプラスになることをしてもらったから、もしくは自分にも非があるから、「相手を訴えるのは悪い気がする」と訴訟を躊躇する人たちだ。リーガルドラマの登場人物としては異例だが、彼らが抱く感情は私たちが日常生活の中でよく感じているもの。宇崎たちは、その情と正義は別ものなのだということを教えてくれる。

これほどまでに“逆”を丹念に描いている本作だが、実際の法廷シーンは、淡々と議論を戦わせていく王道中の王道を貫いているのも特徴である。さらに各話の見せ場では、戦隊モノや映画『アベンジャーズ』を思い起こさせるように、お決まりのBGMとともに主要キャラクターたちの表情がクローズアップされる。その様子はまさにこれから正義の戦いに臨む戦士たち。“逆”を大切にしているからこそ、弁護士としての王道の部分や展開がカッコよく、光り輝いて見えるのかもしれない。

これまでさまざまな訴訟をしつつ、宇崎の父や轟の娘が巻き込まれたバス事故という大きな謎に挑んできたピース法律事務所のメンバーたち。第9話では、轟と桐石、そして刑事の浅見(りょう)のチーム結成秘話と宇崎と轟の関係、その出会いの必然性が描かれた。盛り上がる最終章を前に“ネタばらし”をするようなこの構成は、どこかアニメや漫画的で、ドラマではありそうでなかったもの。だが、この第9話が最終章への期待を一気に高めるものにしている。宇崎たちが、未だ全貌のわからない大きな敵にどう挑んでいくのか、そしてその一筋縄ではいかない戦いをどんな展開で見せてくれるのか、とても楽しみである。
BABEL LABELがTBSと初タッグを組むダークリーガル・エンターテインメントドラマ。“争いの火種”があるところへと潜り込み、人々に訴訟を焚きつけ、あらゆる手段を使って原告を勝訴へと導く「ピース法律事務所」の弁護士たちの姿を描く。
■放送情報
金曜ドラマ『イグナイト -法の無法者-』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:間宮祥太朗、上白石萌歌、三山凌輝、りょう、及川光博、仲村トオル
企画・プロデュース・脚本:畑中翔太
脚本:山田能龍、山口健人
法律監修:福島健史
音楽:森優太
主題歌:B'z「恐るるなかれ灰は灰に」(VERMILLION RECORDS)
プロデューサー:山田久人、瀬崎秀人、駒奈穂子
編成:松本友香、杉田彩佳
監督:原廣利、山口健人、吉田亮
製作:BABEL LABEL、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ignite_tbs/
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