“異色だらけ”の『イグナイト』が貫いた“逆”の美学 ちりばめられた王道の展開が輝く構成に

『イグナイト』が提示する“逆”の美学

 間宮祥太朗が主演を務めるTBS金曜ドラマ『イグナイト -法の無法者-』が6月20日に第10話を迎える。

 「争いは、起こせばいい」をキャッチコピーとしている本作は、間宮が演じる父親を事故で亡くしたことをきっかけに弁護士を志した新米弁護士・宇崎を主人公としたリーガルドラマ。基本的にリーガルドラマとは、争いを平和的に解決するために行われる裁判を舞台にしており、構成としては、事件が起き、弁護士が被害者もしくは容疑者のために事件の真相を探って、裁判でそれを明らかにしていくというものが多い。だから争いは“起こるもの”なのだが、キャッチコピーにある通り、本作は通常のリーガルドラマとは“逆”をいくものだ。実は、この“逆”というのが本作全体の大きなキーポイントとなっている。

 まず、タイトルにもあるイグナイト(Ignite)とは「火を付ける」という意味。宇崎がひょんなことから所属することになったピース法律事務所は、弁護士たちが“争いの火種”を探して潜り込み、人々に訴訟を焚きつけ、あらゆる手段を使って原告を勝訴へと導くというやり方を貫いていた。何かで困っている人がやってくるのを待つのではなく、困っている人を探し出すという法律事務所のコンセプトがすでに“逆”である。

 本作には第1話からさまざまな“逆”が存在していた。山上工業で3年前に起こった作業員のサイロ転落事故を追うことになった宇崎は、山上工業の顧問弁護士を名乗る桐石(及川光博)と遭遇する。宇崎にとっては法廷で対峙することとなる“敵”の弁護士にあたるのだが、実は桐石はピース法律事務所の協力メンバーで、内部から悪を切り崩そうとしていた。さらに、宇崎は初の法廷であるにもかかわらず、証言台に立った山上工業の社長の息子で、副社長でもある光輝(長村航希)を巧みに追い詰め、罪を自白させていく。宇崎はやる気は人一倍あるがほぼ最下位ながらもなんとか司法試験を突破した身で、それほどやり手というわけではない。なのにどうして最初からここまでうまくいったのかというとピース法律事務所の代表である轟(仲村トオル)が法廷での展開を事細かに予想し、シュミレーションをしていたからである。最後に私たち視聴者にこの“ネタばらし”がされる話の構成は、起きた事件を調査し、解決するというよくある展開とは“逆”で、スカッとして気持ちがよく、とても興味を惹かれるものだった。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる