『キャスター』“進藤”阿部寛が挑む最大のタブー 報道を通して描いた新旧の世代交代

プルトニウムを積んだ輸送機の墜落。報道されれば一大スクープになり、政権を揺るがすことは必至だ。記事が世に出ることはなく、記事を書いた人間はこの世を去った。けれども、そこにはもう一つ別の真実があった。
ニュース報道の枠組みの破壊をもくろむ『キャスター』は、最終的に、なぜ報じられないニュースがあるのかという疑問、そして日本社会がはらむ最大のタブーへ斬り込む。国家間の公にならない合意、すなわち密約。非核三原則を貫く日本で、核を持ち込ませない原理原則を土足で踏みにじる暴挙で、もしこれがフィクションじゃなければ、国を揺るがす大問題である。ドラマだから広げられる大風呂敷だが、日米密約について縁の深いTBSで今作が作られたことは感慨深いものがある。
「哲さんは自分がどんなにバッシングを浴びても、次なるバッシングを生まないために真実を語らなかった」
報道する自由には、報じない自由もあるのかもしれない。「必要悪」という言葉があるように、悪には悪の存在理由がある。国定の言うことはもっともであり、哲や羽生が秘密を墓場まで持って行ったように、口をつぐむことで守られるものもあるだろう。けれども、本当にそれでいいのか。国定は進藤にバトンを託したわけだが、本心では閉塞した社会や報道のあり方を壊してほしいと願ってもいる。
久々にドラマならではの絵空事を目にし、わかりやすい勧善懲悪を目にしたことで、たしかに得られたカタルシスがあった。第1話のレビューで「ポスト・トゥルース時代の日曜劇場」と書いたが、本作には新しさを志向する“攻めた”一面と、普遍的な“型”への回帰の両面があった。
新旧のスターが顔をそろえた『キャスター』は、日曜劇場が描いてきた父権的なパワーシフトを醸しつつ、世代交代が隠れたテーマでもあった。高橋英樹や阿部寛に、永野芽郁や道枝駿佑、最終話に出演した寺西拓人(timelesz)まで、多世代が集う報道の現場にドラマの可能性を見いだしたのは筆者だけではないだろう。
テレビ局の報道番組を舞台に闇に葬られた真実を追求し悪を裁いていく社会派エンターテインメント。圧倒的な存在感で周囲を巻き込んでいく型破りで破天荒な主人公・進藤壮一が、視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』を変えていく。
■配信情報
日曜劇場『キャスター』
TVer、U-NEXT、Netflixにて配信中
出演:阿部寛、永野芽郁、道枝駿佑、月城かなと、木村達成、キム・ムジュン、佐々木舞香、ヒコロヒー、山口馬木也、黒沢あすか、堀越麗禾、馬場律樹、北大路欣也(特別出演)、谷田歩、内村遥、加藤晴彦、加治将樹、玉置玲央、菊池亜希子、宮澤エマ、岡部たかし、音尾琢真、高橋英樹
脚本:槌谷健、及川真実、李正美、谷碧仁、守口悠介、北浦勝大
音楽:木村秀彬
プロデュース:伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣
演出:加藤亜季子、金井紘
©TBS
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