『キャスター』“進藤”阿部寛が挑む最大のタブー 報道を通して描いた新旧の世代交代 

『キャスター』報道を通して描いた世代交代

 『キャスター』(TBS系)最終話では、今作最大のタブーが明かされた(※本記事ではドラマ本編の内容に触れています)。

 43年前、自衛隊C1輸送機の墜落事故を取材していた松原哲(山口馬木也)は、ライターの火がガスに引火して死亡。父の死の謎を探る進藤壮一(阿部寛)は、事故当時の写真から、JBN会長の国定(高橋英樹)が、哲と墜落事故の取材をしていたことを突き止める。進藤の考えによると、議員の羽生(北大路欣也)に買収された国定が哲を裏切り、葬り去った。

 バッシングに耐えきれずに哲は自死したと考えられていたが、実際は、何者かがガスの充満した部屋に火のついたライターを投げ込んだ。火災現場を訪れた国定はライターを回収しようとして、誤って哲が愛用する同型のライターを持ち去った。進藤は証拠のライターを突き付け、「あんたが親父を殺した」と国定の罪を追及。しかし、国定は表情を崩さずに「裏取りができていない」と進藤の推論を否定した。

 真の黒幕は誰なのか? 父の死と墜落事故の真実を明らかにするため執念の取材を続ける進藤と『ニュースゲート』取材班に、降ってわいたように世間の誹謗中傷が襲いかかる。標的は編集長の市之瀬(宮澤エマ)。身内に反社会的勢力がいると報じられ、JBNの株価は急落し、番組宛てに苦情が殺到する。責任を問われた国定は、進藤の手で生放送での会見に応じることとなった。

 番組の場を借りて実現した進藤と国定の直接対決は、実はカモフラージュで真の狙いは犯人をあぶり出すことにあった。羽生に毒を盛ったのは、旧知の仲の景山(石橋蓮司)で、放射性レアアースで一財をなした景山が、反目する羽生をなきものにしようとして行ったことだった。局幹部が顔をそろえる会見は、記憶に新しい在京キー局の会見を思わせるものだったが、主要キャストが発するセリフも、一つひとつが報道に携わる人間としてのステートメントになっていた。

 テレビ局とコネ入社のまことしやかな風聞に反論することで、出自や思想にかかわらず、公正な報道は可能であると論証し、さらに長年にわたって会長の椅子に座る国定から、会見の真意、すなわち羽生の死について再捜査を促すことを明かす。作中のニュース番組を使い、ドラマの中の視聴者と、本作を観ている視聴者の両方にフェイントを仕掛ける手の込んだ仕様は、「毎日がエイプリルフール」という言葉どおりのものだった。

 しかし、冷静になって考えると、羽生が殺されたことは理解できるとして、哲が殺された理由がいまいち腑に落ちない。というのも、景山は直接哲と関わっていないし、仮に景山たちが実行犯だとしても、その背後に命令した者の存在が推測できるからだ。進藤は追及の手をゆるめず、国定に決定的な証拠を突き付ける。鍋田(ヒコロヒー)を通して入手した原稿には、墜落事故の真実が記載されていた。

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