『あんぱん』が鮮烈に描く軍生活 冷酷に見えた“八木”妻夫木聡の印象に大きな変化が

NHK連続テレビ小説『あんぱん』第50話のラストで登場し、出会い頭から嵩(北村匠海)に怒号を飛ばした小倉連隊の八木上等兵(妻夫木聡)。第11週初日となる第51話は、冷酷に見えた八木の印象が大きく変化する回だ。
太平洋戦争が始まって半年後。嵩は小学校の同級生・今野(櫻井健人)とともに、福岡の小倉連隊で神野軍曹(奥野瑛太)率いる内務班の配属となる。そこで待ち受けていたのは、古兵からの理不尽な指導と暴力だった。

軍隊の1日は朝6時の起床ラッパから始まり、点呼の後に朝食。午前中は教練、昼食を挟んで午後は学科または教練に励み、18時に夕食、21時半に消灯となる。そんな1日の中で、嵩は新兵教育係の馬場(板橋駿谷)ら古兵からいったい何回殴られるのだろう。今回だけで少なくとも10発。正当な理由があるならまだしも、難癖としか言いようがない理由で強烈なビンタを喰らい、嵩の頬は腫れ上がる。これほどまでに軍生活を鮮烈に描くのは朝ドラ史上初ではないだろうか。
さらには新兵の指導不足として、神野から殴られた馬場たちから、先輩の戦闘帽を盗んだ容疑をかけられる嵩。なんて、酷い。しかし、悪役のように描かれている彼らもまた同じような仕打ちに耐え抜いてきたのだろう。上から押さえつけられてきたストレスのはけ口として、さらに下の人間を暴力で痛めつける。

そしてその犠牲となるのはいつだって、子供の頃のようにお腹を空かせた今野に食事を分けてあげる嵩のような気弱で優しい人間だ。これまで描かれてこなかっただけで、『カーネーション』の勘助(尾上寛之)や『ブギウギ』の六郎(黒崎煌代)、そして豪(細田佳央太)もまた似たような目に遭っていたのではないかと考えると暗澹たる思いがする。





















