『あんぱん』『ブギウギ』『虎に翼』も 朝ドラが描いてきた“赤紙”と戦争に向かう男たち

NHK連続テレビ小説『あんぱん』は第10週に入り、戦争がますます激しくなってきた。脚本を担当する中園ミホは、「私はやなせさんを描くということは、戦争を描くということだと思っていて、時間をかけてしっかり描きました」と述べており、物語の要となる第二次世界大戦下の日本が、しっかりと描かれることになるのだろう。(※)
脚本家・中園ミホが『あんぱん』に込めた“やなせたかしの精神” 戦争を正面から描く決意も
NHK連続テレビ小説『あんぱん』の脚本を手がける中園ミホは、小学4年生の時にやなせたかしと文通を始めたという。「アンパンマンのマ…当時は、召集令状、いわゆる「赤紙」が来たら、受け取った者は軍隊に入隊しなければならなかった。『あんぱん』で最初に赤紙を受け取るのは、原豪(細田佳央太)だった。役人がやってきて、「おめでとうございます」と、真紅の紙を朝田釜次(吉田鋼太郎)に渡し、一瞬の間の後、「ご苦労様です」と受け取った。さまざまなドラマで描写されたシーンではあるが、それでも、その緊張感と衝撃、声に出せない慟哭に、毎回胸が苦しくなる。

近年の朝ドラでも、「赤紙」シーンは数多く描かれてきた。印象に残っているものを振り返ってみたい。
戦前戦後に活躍した歌手の笠置シヅ子をモデルにした『ブギウギ』(2023年度後期)では、福来スズ子(趣里)の弟・六郎(黒崎煌代)に赤紙がくる。その時の反応が、物悲しくて忘れられない。
黒崎煌代、『ブギウギ』六郎として生き抜いて 「順調な時にこそ謙虚でいなきゃいけない」
2022年にレプロエンタテインメント30周年企画「主役オーディション」で約5千人の中から見事合格を勝ち取り、NHK連続テレビ小説…六郎は、学校に馴染めず、飼っている亀だけが友達。体力も運動神経もなさそうで、誰が見ても戦争に行くのは向いていないタイプである。その六郎に赤紙が届き、家族はもちろん、見ている方も不安しかないわけだが、本人は「赤紙やぁ!」と喜ぶ。もちろん、当時、招集されるのは名誉なことであり、「ばんざい」といって戦地に送り出さねばならないわけだが、それは建前。本音では、本人も、家族も友人も、「ついに来たか」とショックを受け、口では「めでたい」と言いながら悲しみに沈むところだ。それなのに、六郎は「ワイにもちゃんと来たで! 甲種合格しても鈍くさいお前には赤紙けーへん言うやつおったけど、ちゃんと来たわ!」と素直に喜んでいる様子で、やっぱりこの子は理解していないのだと気の毒になる。
しかし、実はそうではないことがわかる。出征前に、六郎はスズ子を訪ね、「死ぬってどんな感じなんやろ」と、死への恐怖を口にする。スズ子は「あんたは死なん」と言うが、「せやけど、人間みんな死ぬやろ」と、スズ子の布団に潜り込む。そしてスズ子に体を寄せながら、「ワイ、死にとうないわ」と本音を打ち明ける。スズ子も悲しそうに六郎を抱きしめる。スズ子の思いも虚しく、六郎は命を落とすことになる。























