『あんぱん』“草吉”阿部サダヲの過去が明らかに 朝田家に残された“生きろ”のメッセージ

“ヤムさん”として視聴者にも愛されたパン職人・草吉(阿部サダヲ)が朝田家を去った。風のようにどこからともなく現れては、どこへともなく去っていく風来坊。御免与町にもふらりと立ち寄っただけで、またすぐに出立するつもりだったのだろう。そんな草吉を10年以上もひと所に留めたのは、のぶ(今田美桜)たち家族の愛だった。
NHK連続テレビ小説『あんぱん』第46話では、これまでベールに包まれていた草吉の過去が明らかになる。

草吉を追いかけようとして釜次(吉田鋼太郎)に止められたのぶ。釜次はあの夜、草吉から聞いた乾パン作りを拒む理由についてのぶと羽多子(江口のりこ)に説明する。衝撃的だったのは、草吉が欧州大戦(第一次世界大戦)をイギリス軍の日本人義勇兵として戦っていたことだ。銀座の「美村屋」で修行中にもっと美味しいパンを焼きたくなり、密航船に潜り込んで、当時イギリス領だったカナダに渡ったのが運の尽きだった。
義勇兵といえども、草吉の場合は自ら進んで志願したわけではないのだろう。パンを焼くつもりが気づけば戦地に送り込まれ、そこで地獄を味わった。弾丸が飛び交うなか、塹壕の中で何日も何日も耐え抜いた草吉が何よりも辛かったのは「腹が減ること」。仲間たちがどんどん銃弾に倒れ、自分もいつ死ぬか分からない。そんな過酷な状況でありながら、人間、腹は減る。それは、体が生きたがっている証拠だ。
どんなに国のために命を捧げる覚悟を持とうとも、過酷な戦場で心が先に砕け散ろうとも、体は生きようとする。草吉も極度の空腹には抗えず、倒れて動けない仲間の懐から奪ったビスケット、いわば乾パンを泣きながら食べた。
乾パンはそんな二度と思い出したくもない過去を想起させるもの。かつ、見ず知らずの誰かに同じ苦しみを味わわせたくなかったのもあるのかもしれない。一度は朝田家のみんなを守るために仕方なく乾パンを作ったが、これ以上、信念に背いて作り続けることはできなかったのだ。





















