『おとなになっても』山本美月×栗山千明から目が離せない 綾乃の“正直”な恋心の行方は

また、第6話を終えた現時点において興味深いことがある。本作はある意味、綾乃と朱里に限らず、すべての登場人物が、第1話冒頭の綾乃自身の独白通り「一度決心すると一直線」な綾乃の行動に振り回され、人生を動かされていく話なのである。朱里と出会い「居ても立っても居られなくて」夫・渉や義母の依子(麻生祐未)に「好きな人」の存在を明かす綾乃。渉が怒り、困惑することは当然なのであるが、第2話において綾乃の告白に戸惑う渉の主観パートが用意されているように、綾乃の突然の恋によって脅かされる渉の人生を決しておざなりにせず描こうとしているのがわかる。また、綾乃の狡さや弱さを誰より的確に指摘する渉の存在を通して、決して簡単に許されることではない綾乃の行動の罪深さを示してもいる。

一方で、綾乃の告白を「それだけのこと?」と受け流し「禊ぎ」として首尾よく同居を提案し実行に移す依子もまた、人間として興味深い。第2話において、息子夫婦が住むマンションの玄関に佇む依子の少し物憂げな表情から、依子も本作が描こうとしている「悩みを抱えるおとな」の1人なのだと感じさせる。さらに、渉の実家に住んでいる引きこもりの妹・恵利(錫木うり)もまた、綾乃や朱里との出会いをきっかけに、外の世界に少しずつ足を踏み出しつつある。
大人も悩む。大人だから、悩む。「朱里さんは、答えがでないとき、どうしますか?」と尋ねる綾乃に対し「私なら一旦走るかな」「一回頭の中がリセットされるっていうか」と答えた朱里が走る場面がある。第5話において、地域のイベントとして企画されたミニマラソンで、勤務先の美容室の代表に元陸上部である彼女が選ばれたのだ。走りながら既婚者である綾乃への想いという「答えがでない問い」と向き合ったその先の青空に、彼女は思わず「綾乃との未来」を想像するが、高揚した思いは祭りの終わりの光景とともにしぼんでいく。「朝、偶然会えたらラッキー。少しお喋りできたら1日ハッピー。そんな中学生みたいな関係」の2人の現状のままではいられないのは、彼女たちが「おとなだから」だった。
「もう会わない」と宣言した朱里の決意を前に、今度は綾乃の心が大きく動き出す。離婚に向けて行動を起こした綾乃のことを知り、一度は「会わない」と決心したはずの朱里の心もまた、「会いたい」に向かって走り始めた。これは、人生が思うようにいかないおとなたちの話だ。真っ直ぐすぎる綾乃の恋心は、ままならない人生の停滞を受け入れて、なんとなく生きていた人々の心を揺らす。もがきつづける彼ら彼女らの思いのその先に、どんな未来が広がっているのだろうか。
■配信情報
Huluオリジナル『おとなになっても』
Huluにて独占配信中(全12話)
出演:山本美月、栗山千明、濱正悟、麻生祐未、桐山漣、河北麻友子、錫木うり、樋口日奈、織田梨沙、野口かおる、田中直樹
原作:志村貴子『おとなになっても』(講談社『Kiss』所載)
脚本:灯敦生、丹保あずさ、合田純奈
監督:兼重淳、定谷美海
エグゼクティブプロデューサー:勝江正隆
チーフプロデューサー:石尾純、代情明彦
プロデューサー:岩長真理、渋谷昌彦、黒澤優介
制作協力:PADMA
企画・制作プロダクション:AOI Pro.
製作著作/配信:HJホールディングス
©志村貴子/講談社 ©HJホールディングス
公式サイト:https://www.hulu.jp/static/otonaninattemo
Hulu配信ページ:https://www.hulu.jp/even-though-were-adults






















