本田響矢の大ブレイクは“必然”だった 『めおと日和』瀧昌さまに集約された2つの個性

新しいスターが次々と生まれる連ドラの世界。この春、最もブレイクした俳優として多くの人が名を挙げるのが本田響矢だろう。木曜劇場『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)で主人公・なつ美(芳根京子)の夫であり、帝国海軍の中尉である瀧昌を好演。Instagramのフォロワー数は87万人を突破し(2025年5月27日時点)、100万の大台も見えてきた。
本作がGP帯初レギュラーということもあり、「瀧昌さま」で本田を認知した視聴者も多かったが、2022年から2025年の春までで実に20本以上ものドラマに出演。着々と足がかりを築いた上でのブレイクと言える。その歩みがいかにして「瀧昌さま」に結実したのか。この一大フィーバーは必然だったと言うべき俳優・本田響矢の魅力に迫る。
本田響矢が得意とした2つの役柄

本田響矢のフィルモグラフィーを振り返って驚かされるのが、恋愛ドラマへの出演の多さだ。その役柄は2つに大別される。
1つが『青春シンデレラ』(ABCテレビ)、『ANIMALS -アニマルズ-』(ABEMA)、『私は整形美人』(フジテレビ系)に代表される、クール(もしくはぶっきらぼうな)イケメン。もう1つが『ジャックフロスト』(MBS)、『私と夫と夫の彼氏』(テレビ東京系)、『恋愛バトルロワイヤル』(Netflix)に代表される、ちょっと掴めないふわふわ甘め男子だ。
また、『青春シンデレラ』、『ANIMALS -アニマルズ-』、『私は整形美人』の3作に関して言えば、ヒロインが何らかの方法で美しくなる(垢抜ける)という共通点がある。つまり綺麗になったヒロインが出会う理想の王子様として、本田響矢は機能していた。これは本田の端正なマスクを考えると当然の采配とも言え、クール系ではないが、『私が獣になった夜~好きになっちゃいけない~』(ABEMA)や『ブラックガールズトーク』(テレビ東京系)の後輩男子も、理想化されたキャラクターの一種だ。
こうした傾向は、本田に限らず、イケメン俳優のロードマップとしては妥当なルートであり、多くの先輩俳優もこれらを登竜門にスターダムへと駆け上がっていった。だが一方で、イケメンがイケメンを演じるというのは意外性に欠け、恋愛ドラマを好む層には受け入れられやすいが、それ以外への拡大が難しく、同じようなイケメン役が重なることで足踏みが続く「イケメン俳優の呪縛」と言うべき落とし穴にハマるケースも少なくない。本田自身も、ここまでの役を振り返ってみると、ややおさまりが良いところに落ち着きすぎていたような印象もある。
では、「イケメン俳優」と呼ばれる俳優たちはどう呪縛を跳ね除け、踊り場を曲がるか。そのポイントにこそ、今回の本田のブレイクの必然性がある。
イケメンらしからぬ人間味こそが、本田響矢の個性

ここまでの本田の出演作を見ていて特に個性を感じるのは、実は「イケメンらしからぬところ」だ。端的に言うと、バッグハグやカメラ目線での甘い言葉といったイケメン仕草もさることながら、嫉妬に駆られたり、ままならない状況にたじろいでいるときのほうが、より役の魅力が開花するのだ。
たとえば『青春シンデレラ』では序盤は本心の見えない無愛想キャラだった。が、修学旅行中にオシャレに変身したヒロインを見てドギマギしたり、「抱きしめてくれたら泣き止む」と思わせぶりなことを言われて目を丸くしている姿を見せることで、一転、役の人間味が溢れ出た。『ANIMALS -アニマルズ-』でもちょっと自信家なカメラマンという印象が、ライバル役のハイスペ社長とヒロインが仲良くしているところを目撃し焦る顔を見せることで、奥行きが広がった。
『私は整形美人』に関して言えば、わりと早々にヒロインに恋に落ち、ピュアで鈍感すぎるヒロインに振り回される様子が愛されポイントとなった。また、恋愛ドラマではないが、『恋愛のすゝめ』(TBS系)も主人公である男性の級友に巨大な感情を抱くあまり、主人公が恋路に走るのを阻止する役どころがハマっていた。
つまり、本田響矢は理想の王子様を寸分の狂いなく体現する少女漫画適性の高さを持つ一方で、人間のちょっと不器用なところやズレたところを愛らしく表現するおかしみを備え合わせた俳優だった。この2点が集約したのが、『波うららかに、めおと日和』の「瀧昌さま」だ。
瀧昌人気がこれほど爆発している理由は、昭和の軍人らしい硬派で一途な性格も大きいが、決してそれだけではない。むしろその実直さの裏にある、言葉足らずで、照れ屋で、嫉妬深く、しばしば脳内で妄想が暴走し、それが態度としてダダ漏れしているところに、視聴者は心を鷲掴みにされている。そして、そんなちょっと様子のおかしいところを本田がコミカルかつキュートに演じているからこそ、実写ならではのチャーミングな「瀧昌さま」が生まれたのだ。
特にここ数年は、パーフェクトなイメケンよりも、「様子のおかしいイケメン」を愛でる傾向が高まっている。こうした世間的な需要と役の個性、そして本田自身がここまで磨き上げたイケメンらしかぬ人間味がマッチして吹き荒れたのが、この春の「瀧昌さま」旋風だと言えるだろう。





















