稲垣吾郎、“実年齢役”での民放連ドラ復帰に高まる期待 令和の時代にこそ映える存在感

稲垣吾郎、民放連ドラ復帰に高まる期待

 稲垣吾郎が築いた俳優としての立ち位置について、佐藤氏は「稲垣さんは“トップアイドルは主演であるべき”という、ある種の固定観念を崩してくれた存在だと思います」と強調する。

「SMAPというグループが築き上げたアイドル俳優像のひとつに、“主演を務めたら脇役には戻れない”という思い込みのようなものがあったと思うんです。それだけ強烈なスター性を持つグループだったからです。でも、稲垣さんはそこを違うやり方で突破していった。大きな転機となったのは2010年の映画『十三人の刺客』で演じた暴君・松平斉韶役。当時としてはトップアイドルが残忍な極悪人を演じるというのはかなりの衝撃だった。その後も一癖も二癖もある役柄に果敢に挑戦していった。潔癖でマザコン夫を演じた『不機嫌な果実』(テレビ朝日系)や、手塚治虫原作の映画『ばるぼら』のような独特な世界観の作品に挑む姿からは、『こんな役もやってくれるんだ』という驚きとともに、どんな役でもその人らしさを滲ませる稲垣さんならではの柔軟さと芯の強さを感じます」

 では、今回の民放連続ドラマへの出演には、どのような新しさや挑戦があるのか。佐藤氏は、その役どころに注目する。

「今回稲垣さんが演じる尾碕理事長という役柄は、主人公に対してそっけなく、時に冷たい態度を見せる人物であるようです。でも、ただ冷たい態度を取るだけではパワーバランス的にもハラスメントに見えてしまう可能性もある時代ですし、そこにきちんと“理由がある”ことを、視聴者に自然と納得させられるだけのニュアンスが求められる。その複雑な空気感を、“冷たさ”と“正義感”のはざまでどう演じきるのかが、大きな挑戦になるのではないでしょうか」

 さらに、テレビドラマというメディアの特性にも言及する。

「映画や舞台とは違って、テレビドラマでは過度に演技を強調すると違和感が出てしまう。でも視聴者に分かりやすく伝える必要もある。そういう中間の、すごく難しいラインを攻めることになると思うんです。『あれ、もしかして嫌われてる?』みたいな微妙な空気の演じ分けって、実はすごく繊細な技術が必要になる。だからこそ、稲垣さんがそこに挑む意味は大きいと思います」

 そして今回の出演が特別な意味を持つ理由のひとつに、尾碕美佐雄というキャラクターが稲垣と同じ「51歳」という年齢で描かれている点がある。

「正直、ここから稲垣さんのテレビドラマ出演がどのくらい増えていくのかは未知数です。でも、今回のように“彼にしかできない役”として求める声がある限り、今後も十分に可能性はある。おそらく長く見てきたからこそ当たり前のように感じてしまいますが、“稲垣吾郎”のような存在感の俳優って、代わりがいないと思います。その貴重さを存分に噛みしめる作品になることを楽しみにしています」

 51歳という実年齢の役での民放連ドラ復帰。それは単なる“カムバック”ではなく、これまでのキャリアと技術の蓄積があるからこそ可能になった、新たなフェーズへの一歩だと言えるだろう。

■放送情報
『僕達はまだその星の校則を知らない』
カンテレ・フジテレビ系にて、7月スタート 毎週月曜22:00〜放送
出演:磯村勇斗、堀田真由、稲垣吾郎
脚本:大森美香
音楽:Benjamin Bedoussac
監督:山口健人、高橋名月、稲留武
プロデューサー:岡光寛子(カンテレ)、白石裕菜(ホリプロ)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/bokuhoshi/
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