『いつか、ヒーロー』視聴者の魂を揺さぶる桐谷健太の“声” 複雑で難解な役を担う宮世琉弥

『いつか、ヒーロー』“赤山”桐谷健太の訴え

 『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)には、鍵を握るキャラクター・ブラックジャガーが登場する。赤山誠司(桐谷健太)が幼少期に憧れていたブラックジャガーは、勝つために反則ばかりして悪役レスラーのリーダーになったらしい。でも、弱くても正しい人たちに出会い、反則をやめて仲間を守るために正義になった。

 そんなブラックジャガーの生き様は、誠司に通ずる部分がある。誠司もかつては、「世の中は弱肉強食だから、強くなって食う側に回ってやる」と思い、他人を蹴落としてきたが、児童養護施設「希望の道」で、ゆかり(長濱ねる)らと出会い、弱い人たちを守るいい人間になった。正義というのは、人それぞれだが、多くの人がかつての誠司より、今の誠司に共感するのではないだろうか。

 ただ、悲しいけれど、いい人がバカを見ることって多々ある。小さなことだと、仲間内でいじられキャラに回されてしまったり。もちろん、本人がいじられるのが好きな場合もあるかもしれないが、度を越えたいじりは、いじめになりかねない。『なんで私が神説教』(日本テレビ系)でも議題に挙がっていたが、自分を卑下されて嬉しい人はなかなかいない気がする。

 それなのに、一度でも「この人は怒らないから、何を言ってもいいんだ」と認識されてしまったら、永遠にいじられ続けることになる。また、いじめやパワハラを受けた時も、何も言わずに黙っていたら、搾取される立場に追いやられてしまう。相手を傷つけるような行為をする人間が悪いのは大前提として、世の中の仕組みがそうなっているのは事実だ。

 かつての誠司や若王子(北村有起哉)はそれを知っていたからこそ、搾取されるより搾取される側に回ろうと考えたのだろう。でも、どん底まで落ちて、相手を労る気持ちを知った今の誠司は違う。そもそも、搾取する側の人間がいなければ、搾取する人間も生まれない。だから、いい人がバカを見る世の中を変えていきたいと本気で考えている。

 正直、「そんな理想論を語られても……」と冷めた気持ちになる人も、なかにはいるかもしれない。でも、桐谷健太の眼差しを見ていると、「この人なら、本気でやり遂げちゃうかも」と希望を抱くことができるのだ。また、彼の声には視聴者の魂を揺さぶる力がある。時には全力すぎてしゃがれたり、涙が溢れて言葉が詰まったり。演じているというよりも、桐谷自身が思っていることを、赤山誠司というキャラクターを通して視聴者に訴えかけているように感じる瞬間がある。

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