『いつか、ヒーロー』衝撃展開のオンパレード 明らかになった氷室“宮世琉弥”の正体

全てを覆す衝撃のラスト60秒ーー。
こういった宣伝文句が入っていると、期待値が上がりすぎて、「なんだ、こんなもんか」と肩透かしを食らうことも多い。しかし、『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の場合は“ガチ”だった。ラストにいろいろなことが起こりすぎて、正直いまも心の整理がついていない。第6話は、本作における大きな転換期と言えるだろう。
※以下、『いつか、ヒーロー』第6話のネタバレを含みます。
まず、最初に明らかになったのが、主人公・赤山(桐谷健太)の過去。典型的なヒーローに見えていた彼にも、実は裏の顔があったのだ。かつての赤山は、ファンドマネージャー(※投資信託の運用を指導する専門家)をしていたらしい。弱った日本の会社を買収し、不採算部門を切り捨てて価値を上げ、転売で利益を得る。当時の赤山は、法の抜け道を探して勝つためならなんでもしていたそうだ。そして、いつしか彼は“失われた30年の生みの親”と呼ばれるようになった。
幼少期の赤山は、かなり過酷な生活を強いられてきた。まず、父親が他人に騙され、代々受け継いだ工場が人手に渡ったせいで自殺。母親も、心労から病気になってしまった。そこで赤山は、世の中は弱肉強食であることに気付き、「だったら、強くなって、食う側に回ってやる」と決意したらしい。
弱いことを“罪”とまで思い込んでいた彼は、弱者に対して容赦がなかった。リストラもバンバンするし、そのせいで自殺に追い込まれる人がいても、「弱いからやられるんだ」と言い聞かせていた。
そんななかでも、赤山の妻は夫のことを信じていたのだと思う。彼女は、幼なじみだからこそ、赤山の本性を知っている。きっと、児童養護施設「希望の道」で働いていた頃の赤山が、彼の本来の姿だったのではないだろうか。誰かのために本気で怒って、泣いて、笑って。ブラックジャガーが好きだった少年時代の彼を知っていたからこそ、その変化に戸惑いを隠せなかったのだろう。
2人が幼少期に住んでいた街にあった工場を赤山が閉鎖させたせいで、2人目の自殺者が出たのを知った日、妻は高速道路の壁にぶつかって死んでしまった。ブレーキ痕がなかったため、自殺と断定されたらしい。だから、西郡(板谷由夏)は赤山のことを「人殺し」と言っていたのだろう。
最終的に、赤山は金に復讐するつもりが復讐され、自暴自棄に。中学時代の恩師・森本(寺島進)に誘われて、「希望の道」の職員として働くことになった。
「若い奴に言ってやりたい。世の中生きてるのも悪くないぞって。いい人がバカをみる社会は、社会が悪いんだって。弱い人に寄り添えないような人間は、どんだけ稼いでようが、どんなに人気者だろうが、クズはクズだよ。それが言えないような世の中だったら、世の中が悪いんだ。だから、生きてくれって」
この赤山の台詞こそが、脚本家・林宏司が本作に込めたメッセージなのだろう。石崎ひゅーいが歌う主題歌「HERO」の歌詞にもあるように、優しさだけでは誰も救うことができないのかもしれない。でも、それは優しい人間が悪いわけじゃない。そういう人間が損をする社会の構図がよくないのだ。だから、大人たちはそこを変えていかなければならない。変える責任がある。