『あんぱん』に宿る『アンパンマン』やなせたかしの哲学 第1~7週のサブタイトルから考察

このまま「アンパンマンマンのマーチ」の歌詞が続くのかと思いきや、第5週のサブタイトルとなったのは「人生は喜ばせごっこ」。これは、著書『絶望の隣は希望です!』の中にやなせが綴った言葉だ。合わせて「人間が一番うれしいことは何だろう。長い間、僕は考えてきた。そして結局、人が一番うれしいのは人を喜ばせることだということがわかりました。実に単純なことです。人は人を喜ばせることが一番うれしい」とも語っている。
やなせは「単純」と言っているが、人を喜ばせるために動くのはそう簡単じゃない。そもそも「人を喜ばせる人生を送ろう」という答えにたどり着く人も、そんなに多くはないのではないだろうか。この言葉から、やなせの人柄が見えてくる。

そしてこの言葉も、作中に反映。嵩の合格を受け、寛は「清が生きちょったら、おまんの合格をさぞかし喜んだろうにゃ。嵩、何のために生まれて、何のために生きるか、わしゃ思うがよ。それは人を喜ばせることや。おまんのあんなうれしそうな顔を見て、わしもこじゃんとうれしかったじゃ。人生は喜ばせごっこや」と言葉を贈っている。
第6週は、戦争の影が見えてくることで「くるしむのか愛するのか」というサブタイトルがつけられた。『あんぱん』は、やなせとその妻・小松暢が戦前、戦中、戦後の時代を生き抜き、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』を生み出すまでの愛と勇気の物語。この第6週で嵩が恩師・座間晴斗(山寺宏一)と出会い、のぶが「愛国の鑑」となり、豪に召集令状がかかったことから、やなせの人生を描く上で重要な週になったことは間違いない。

ちなみに、上記で触れなかった第2週「フシアワセさん今日は(こんちには)」もやなせの詩集から、第7週「海と涙と私と」はやなせの作詞曲のタイトルだ。今後どうやなせの人生と絡んだサブタイトルが登場するのか、物語と合わせて楽しみたい。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK






















