『対岸の家事』『続・続・最後から二番目の恋』 民放ドラマが描く多様化する家族のあり方

また社会の変化や価値観の多様化に伴い、ドラマで描かれる家族像もどんどん豊かになっている。『日本一の最低男』では結婚式を夢見る男性同性カップルが直面する困難や葛藤が丁寧に描かれ、話題となっていたが、今期放送の『三人夫婦』(TBS系)では女性同性カップルの結婚式のシーンがよりナチュラルな形で挿入されていた。
そんな同作は、男性2人、女性1人という3人での新たな夫婦の形を描く物語だ。ヒロインの美愛(朝倉あき)は彼氏の新平(鈴木大河)から提案され、元彼の拓三(浅香航大)と3人で暮らすことになる。突飛な設定のように思えて意外に理にかなっているところもあり、「1人で支える自信はないけど、2人なら支えられる気がする。経済的にも、もう1人いればグンと楽になるじゃん」という新平の主張には思わず納得してしまった。特に経済的な理由で子供を持つことを諦める人が多い今、夫と妻の 2人ではなく、複数人で子供を育てていく形もありなのかもしれないと思わされる。

同作と少しテーマが重なっているのが、『彼女がそれも愛と呼ぶなら』(読売テレビ・日本テレビ系)だ。主人公の伊麻(栗山千明)は複数の人を愛する“ポリアモリー”で、亜夫(千賀健永)、到(丸山智己)という2人の恋人と、高校生の娘・千夏(小宮山莉渚)と「全員合意の上」で共に暮らしている。本人たちが納得しているとはいえ、世の中的には1人の人間を愛することが正しいという風潮があり、反感を抱いてしまう人もいるだろう。だが、常識や独占欲・嫉妬心といった感情で相手を縛ることなく、尊重しようとする彼らの姿から学ぶことも多い。
今まで韓国ドラマやNetflix作品と比較され、「遅れている」「つまらない」と批判されることも多かった日本の民放ドラマだが、近年は時代の変化に合わせて、今を生きる人たちの声や新しい考え方を取り入れ、日々アップデートされている。本稿で挙げたような多くの人に共感を呼んだり、新たな知見を与えてくれたりする良質な作品も増えているので、改めて日本の民放ドラマに目を向けてみてはいかがだろうか。
朱野帰子による小説『対岸の家事』を原作としたヒューマンドラマ。専業主婦の主人公・詩穂が、生き方も考え方も正反対な「対岸にいる人たち」とぶつかり合いながら、自分の人生を見つめ直していく模様を描く。
■放送情報
火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:多部未華子、江口のりこ、ディーン・フジオカ、一ノ瀬ワタル、島袋寛子、田辺桃子、松本怜生、川西賢志郎、永井花奈、寿昌磨、吉玉帆花、五十嵐美桜、中井友望、萩原護、西野凪沙
原作:朱野帰子『対岸の家事』(講談社文庫)
脚本:青塚美穂、大塚祐希、開真理
プロデューサー:倉貫健二郎、阿部愛沙美
演出:竹村謙太郎、坂上卓哉、林雅貴
編成:吉藤芽衣
製作:TBSスパークル、TBS
©TBS
©朱野帰子/講談社
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/taigannokaji_tbs/
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