『べらぼう』横浜流星×染谷将太の駆け出す姿が眩しい 蔦重×唐丸の“夢の続き”が始まる

『べらぼう』蔦重×唐丸の“夢の続き”

 北川豊章(加藤虎ノ介)の代わりに絵を描きながら、夜は性別を問わず身を売る生活。そんな過酷な暮らしを「居心地がいい」と言って、蔦重を拒絶する唐丸。まるで自分で自分を罰するかのように、その生活から逃れようとしない。聞けば、その育ちは壮絶なもので、母親から体を売ることを強要されてきたという。

 愛情に飢えながら育った唐丸が唯一生きる楽しみを見い出すことができたのは、絵を描いている時間だった。ひょんなことから妖怪画の名手・鳥山石燕(片岡鶴太郎)と知り合った唐丸は、その才覚を認められたことも。

 しかし、あの母親は唐丸が夢に生きることを許すはずはなく⋯⋯。そんなときに大きな転機が唐丸の目の前に転がってくる。それが、あの明和の大火だった。迫りくる炎に恐れおののいたとはいえ、母親から逃げ出したい一心で見殺しにしてしまったという罪悪感から、命を投げ出そうとしていたところに蔦重と出会った。

 あのまま蔦重のもとで唐丸として出直したかった。絵を褒められて、こみ上げる嬉しさを隠しきれなかった唐丸の表情を思い出すと胸が苦しくなる。そして、蔦重が語った「当代一の絵師にしてみせる」という夢。ヤスが現れたことで一度は覚めることになった夢を、まだ見続けてもいいのだ。蔦重との再会は、そう運命に言われているかのようだった。

 「お前が生きてぇってんなら、いくらでも手貸すことはできんぞ」「俺は死んで償いてぇのに、こいつに無理矢理描かされてるんだって、その言い訳にはなれる」「死んだ奴らには悪いけど、お前が生きてて良かったとした思えねぇんだよ」と語りかける蔦重の言葉によって、少しずつ唐丸の心に絡みついたものがほどけていく。

 そして「俺の役目はお前を助ける。俺はお前を助ける」と繰り返す蔦重。その潤む瞳の奥には平賀源内(安田顕)をはじめ、これまで助けてもらう一方で、自分が助けられなかった人への思いも含まれているのがわかる。そのくらい、重みを感じる言葉を蔦重が語りかけられるようになったことにもグッとくるものがある。

 明和の大火から逃げ出した姿と重なる、豊章の家から駆け出した2人。だが、あのときには持っていなかったものを2人は手にしている。どんなに苦難が立ちはだかっても、諦めなかった、いや諦めきれなかった強さが2人にはある。それは、夢を現実に描いていく力とも言える。

「夢から覚めたと思ったら、それもまた夢」

 捨吉から唐丸、そして歌麿へと名前を変えて、続いていく2人の夢の続きが見られる。そんな喜びを今は噛み締めたい。

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

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