『めおと日和』『わた婚』『ヒプマイ』にも登場 “堅物な軍人像”はなぜ王道キャラに?

“堅物な軍人像”はなぜ王道キャラに?

 一方で、近年の女性向けフィクションでは、中華ファンタジーと並んで、和風ファンタジーの人気も高まっている。

 そうした流れのなか、感情を抑えた堅物キャラクターである『わたしの幸せな結婚』の久堂清霞のような軍人は、ヒーローのポジションとして物語の中心に据えられ、高い支持を集めるようになった。軍人キャラクター自体は、もともと日本のフィクションに広く根付いてきたが、こうした近年の“和風恋愛ファンタジー”ブームと重なったことで、堅物な軍人像がラブストーリーの中でより多くの層に浸透していったといえるだろう。

 そもそも「軍人」という存在は、忠誠心や規律、感情の抑制といった、自己を律する美徳を体現している。フィクションにおいて、これらの属性は単なる厳格さとして描かれるのではなく、「簡単には心を開かない存在が、たった一人にだけ見せる顔」という特別なギャップを際立たせる力を持っているのだ。

 普段は冷静沈着でありながら、恋愛においてだけは戸惑い、拙く、それでもまっすぐに相手を思おうとする一途さと不器用な優しさ。その姿は、「こんなふうに守られたい」という憧れと、「こんな不器用な人を支えてあげたい」という愛しさ、その両方の感情を同時に呼び起こす。だからこそ、堅物軍人キャラクターは、女性向けコンテンツにおいて非常に相性のよい存在だと言える。

 『波うららかに、めおと日和』に登場する江端瀧昌も、まさにそんな堅物軍人キャラクターの魅力を体現している存在だ。帝国海軍の中尉である瀧昌は、急な訓練のために式に出席できず、花嫁姿のなつ美の隣には本人ではなく「写真」だけが置かれるという、衝撃的なスタートを迎える。そこから徐々に彼自身の人柄が描かれていくが、やはり瀧昌は人付き合いには不器用なようだ。普段は男性ばかりの軍の中で過ごしているため、なつ美に対しても感情を素直に表現することが得意ではないことが伝わってくる。

 しかし、「夜は冷えますね」と呟くなつ美に対し、瀧昌が自分の外套を差し出す場面に象徴されるように、ふとした瞬間に見せる優しさや無骨な愛情表現が際立つシーンも。言葉少なでありながら、誠実に相手を思いやるその姿は、堅物キャラクター特有の魅力をいっそう際立たせていた。

 和風ファンタジー人気とともに、改めて注目を集める堅物軍人キャラクターたち。コンテンツの多様化が進み、軽やかに感情を交わすキャラクターたちが主流になった今。その時代にあって、感情をうまく言葉にできず、ただ一人をひたむきに思い続ける堅物な軍人キャラクターは、ひときわ尊く、愛おしい存在に映るのかもしれない。

 江端瀧昌という新たな軍人キャラの登場によって、またひとつ、多くの視聴者の心に新たなときめきが芽生えようとしている。

■放送情報
『波うららかに、めおと日和』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:芳根京子、本田響矢、山本舞香、小関裕太、小宮璃央、咲妃みゆ、小川彩(乃木坂46)、戸塚純貴、森カンナ、高橋努、紺野まひる、生瀬勝久、和久井映見ほか
原作:西香はち『波うららかに、めおと日和』(講談社『コミックDAYS』連載)
脚本:泉澤陽子
音楽:植田能平
主題歌:BE:FIRST「夢中」
プロデュース:宋ハナ
演出:平野眞
制作協力:FILM
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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