『あんぱん』帰省したのぶの心境はGWの新入社員と同じ？　嵩が見つけた自身の“生きる道”

　あんぱんをほおばって涙を浮かべるのぶは、入学したての新入生あるいは入社1年目の新卒社員と重なる。慣れない環境で苦労して、あらためて自分がいた場所の居心地の良さ、人の温かさを感じる。帰ってくる場所があるから負けずに頑張れるのだ。サプライズはそれだけではなかった。のぶの帰省を知った嵩が朝田家にやってきたのだ。

　嵩は美術の学校を受験することを報告する。直接伝えたかったのだろう。「のぶちゃん」と呼びかけ、「僕は絵を描いて生きていく」と宣言した。のぶの表情が印象的だった。驚くのでもなく、喜んでいないわけでもなく、あえて言葉にするなら「やっぱりそうだよね」という納得の表情。「わかっちょったよ」と言ったのは、のぶは嵩の才能をすでに知っていたからだ。

　本人が気づかない才能を本人よりも先に知っている人は、その人の理解者だ。嵩に向かって「絵を描くために生まれてきた人」と言うのぶは嵩の最高の理解者で、嵩が落ち込んでいるとき、自分のことのように心配してくれた。のぶの開かれたパーソナリティは、まんべんなく周囲の人々に向けられているけれど、その恩恵を誰よりも受けているのが、人一倍繊細で感受性の強い嵩だった。自身を肯定してくれる存在と出会えた嵩にとって「勇気100倍」は誇張ではなく、本心そのものだと思う。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送／毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送／毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送／毎週土曜10:15～11:30再放送
出演：今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽：井筒昭雄
主題歌：RADWIMPS「賜物」
語り：林田理沙アナウンサー
制作統括：倉崎憲
プロデューサー：中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出：柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供＝NHK