『あんぱん』ソニンはまさに”ハチキン”な女だ 朝ドラ初出演までに切り開いてきた道のり

『アンパンマン』を生んだ漫画家・やなせたかしの妻である暢をモデルにした朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)。3週目までには、高知弁で“男まさり”を意味する“ハチキン”のヒロイン・のぶ(今田美桜)が、父の「おなごも大志を抱け」という言葉を胸に、自分らしく生きる道を模索する姿が描かれた。

のぶは、学校の先生になるという夢を見つける。その女学校の先生役として登場したのが、朝ドラ初出演で、「高知出身、ハチキンの女」と自らを称するソニンだ。制作統括の倉崎憲によると「高知を訪れるたびに、ソニンさんの出演を心待ちにしている地元の皆さんの声を多く聞き、その期待に応えたいとお声がけさせていただきました」と、地元からの熱烈なラブコールがあったことも伝えられている(※1)。
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第3週の初登場シーンでは、丸メガネに着物に袴姿で「ソニンだと気づかなかった」という視聴者もいたかもしれないが、真っ直ぐに伸びた背筋と毅然と立つ姿、のぶの元気の良さに少しだけ困っている先生の仕草が印象的だった。
ソニンといえば、2000年にダンス&ボーカルユニット「EE JUMP」のメンバーとしてデビューしたものの、相方の脱退により2年後にユニットは解散。2002年にはソロデビュー曲「カレーライスの女」を発表し、裸にエプロンというセンセーショナルなジャケット写真が大きな話題となった。
その後、ドラマ『高校教師』(2003年/TBS系)のメインキャストに抜擢され、ホストにハマる女子高生という衝撃的な役で俳優デビュー。2004年には舞台『8人の女たち』に出演し、2007年に『スウィーニー・トッド』でミュージカル初出演を果たしたのち2008年には本田美奈子のあとを継いだ『ミス・サイゴン』のヒロイン・キム役で高い評価を得る。この頃、テレビなどのメディアからは少し離れていたイメージもあるが、アイドルからミュージカル・舞台俳優へと着実にステップアップをしていたのである。
こうして俳優としての地位を確立してきた29歳の時に、ソニンは文化庁新進芸術家海外研修制度の研修員として、1年間ニューヨークに留学することを決意する。この留学制度は合格率20%程度という狭き門で、かつては演出家の野田秀樹や狂言師の野村萬斎などが留学している。芸能活動を中止するという思い切った決断だったが、「エンタメ界における自分の居場所に悩んでいた」というソニンは、「怖くなかったです。もしお仕事がなくなったら、それはそういう運命だったんだと割り切ろうと思っていたので。それよりも、今引っかかっているしこりをそのままにしておく方がよっぽど怖かった。きっと挑戦しなかったら後で絶対に後悔する。今あるものを守るより、ニューヨークに住みたいという直感をとる方が、その時の私には大切でした」と、当時を振り返っている(※2)。結果的には、1年間の留学を終えてからもニューヨークに残り、2年ほどしてからの帰国となった。その経験は、演技の勉強というだけでなく、その人間力にも影響を与えたであろうことは想像に難くない。