『あんぱん』OP映像は朝ドラ“らしくない”? 過去作のタイトルバック映像と比較検証

『あんぱん』OP映像は朝ドラ“らしくない”?

 3月31日から放送が始まったNHK連続テレビ小説『あんぱん』。朝ドラことNHK連続テレビ小説は、毎回タイトルバック映像(オープニング映像)も見どころとして楽しまれている。ただ今回の『あんぱん』では、その映像が「内容に適していない」旨の意見を持つ視聴者もいたようだ。本稿では、ここ数年の朝ドラにおけるタイトルバック映像を振り返りつつ、『あんぱん』のオープニング映像は、なぜ一部の視聴者から“朝ドラらしくない”と受け取られたのかを検証してみたい。

アニメーションでも多種多様なタイトルバック映像

 『あんぱん』は『らんまん』(2023年度前期)と同様に、高知県が舞台のひとつ。高知は1992年から高校生を対象とした「まんが甲子園」のほか、マンガ・アニメなどに関する施策に力が入っていることでも知られる。

【自主制作アニメ】 鯨を夢む / 予告

 2024年からはアニメの祭典として「高知アニクリ祭」も始まった。なかでも「高知アニメクリエイターアワード」は賞金総額最大3000万円と太っ腹。2025年のグランプリ作品『鯨を夢む』(制作:Shuzuku)には、『映像研には手を出すな!』のマンガ家・大童澄瞳が声優で参加しているのも興味深い。

 『あんぱん』に期待が高まった背景には、高知が再び舞台となったことに加え、アニメ『アンパンマン』シリーズの原作者・やなせたかしとその妻・暢をモデルとした点も挙げられる。ヒロイン・朝田のぶを今田美桜、柳井嵩を北村匠海が演じている。

 『あんぱん』における2人の出会いは幼少期から描かれており、視聴者がストーリーに感情移入しやすい構成となっている。ただ実際にモデルの2人が出会うのは、共に高知新聞社で勤務していたころだった。仮に、幼少期のエピソードを個別に描いていたとしたら、同じくNHKのドキュメンタリー番組『ファミリーヒストリー』のようになったかもしれない。

 本稿の冒頭で記した、『あんぱん』のタイトルバック映像が内容に適していないという指摘について、実在のモデルがいて展開が読めても、ネタバレを避けたいのであれば、話数が進んでいく中で徐々に評価が定まっていくのではないだろうか。

 現在、『カムカムエヴリバディ』(2021年度後期)が再放送中でもあるので、『カムカムエヴリバディ』以降のタイトルバック映像からアニメーションに関するものを振り返って確認してみたい。

 『カムカムエヴリバディ』のタイトルバック映像はコマ撮り(ストップモーション)だった。コマ撮りと聞くと人形などの立体を思い浮かべてしまい、紙などの平面は見落とされがちだ。こちらはコマ撮りでもカットアウト(切り絵)と呼ばれるもので、100年に渡る時の経過を端的に表現していた。

オオカミとブタ -Stop Motion with Wolf and Pig-

 『カムカムエヴリバディ』のタイトルバック映像でディレクターだった竹内泰人は、『オオカミとブタ(オオカミはブタを食べようと思った。)』(2007年)で注目を集めた。2009年にYouTubeにアップすると、ニューヨーク・タイムズのブログでも言及されるなど世界中で話題となったので、当時を思い出す人も多いかもしれない。

 この『オオカミとブタ』は、コマ撮りでもピクシレーションと呼ばれる技法が用いられている。ピクシレーションとは、本来、人間や実物の被写体を一コマずつ撮影してアニメーションのように動かす手法だが、本作ではその手法をさらに発展させている。具体的には、連続して撮影した写真を一度プリントアウトし、そのプリントを別の場所に並べて再び撮影することで、時空間がねじれたような不思議な視覚効果を生み出している。通常のピクシレーションよりも工程が多く、非常に手間のかかる、凝った演出となっているのが特徴だ。また竹内は、2023年に『マツコの知らない世界』(TBS系)で「コマ撮りの世界」に出演している。

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