『トワイライト・ウォリアーズ』はなぜヒットしたのか? 不変の香港映画マインドがここに

そして谷垣健治が手掛けたアクションも、ワイヤーや特殊効果を使ったマンガ的かつ立体的な動きから、血の匂いがしてきそうなリアルなものまで、あの手この手で楽しませてくれる。キャラクターごとにアクションのテイストが異なるのも、キャラ立てに大きく貢献していると言えるだろう。
個性が際立ちまくっているキャラをキャスト全員が好演し、魅力的な空間で最高のアクションが炸裂し、ハードな展開はありつつ、最後は多くの観客の心が温かくなるような締め方をする。このジャンルの娯楽映画として、必要なものが全て入っている。単純にクオリティが抜群に高い。しかし、『ラーメン発見伝』的に言えば、「いいものなら売れるというナイーヴな考え方は捨てろ」と世間は言う。本作が「いいもの」なのは前提として、どうしてここまで広がったのか?
そんなわけで、最後に「どうしてここまで口コミが広がったのか?」の理由だが……私が思うに、この映画の“凄さ”は映画を観ないと分からないうえに、観たら確実に想像の上を行かれるからだろう。この映画の凄さにやられた人は、「とにかく観て!」と言いたくなる。そして実際に観ると、恐らく想像の上を行かれる。すると今度は別の人に「とにかく観て!」と言いたくなる。こうして口コミが広がっていったのではないか。それに本作は、脚本で大きなどんでん返しがあるタイプの作品ではない。これまで何百回と語られてきた物語であり、ある意味でネタバレを恐れなくていい映画だとも言える。そして、たとえネタバレを喰らっても、実際に観たら想像以上に城塞四少は魅力的で、兄貴たちはカッコよく、王九は硬い。この姿勢は、ジャッキーが時計塔から落下していたあの頃――香港映画黄金期から続く「とにかく観客の度肝を抜いたる!」という香港映画マインドに他ならない。『プロジェクトA』を観る前にジャッキーが高い所から落ちると聞いていても、いざ実際に観たら想像以上に普通に地面に落ちていてビックリしたものである。あれと同じだ。
オールスターの演技合戦、超精巧な美術、壮絶なアクション……すべては「観客の度肝を抜いたる!」という不変の香港映画マインドから来るものだ。今、香港映画が厳しい状況に立たされているのは紛れもない事実である。しかし、それでも魂を消すことはできない。香港映画マインドは決して滅びることはないだろう。本作『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』は、そのことを証明する1本だ。
■公開情報
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
全国公開中
出演:ルイス・クー、サモ・ハン、リッチー・レン、レイモンド・ラム、フィリップ・ン
監督:ソイ・チェン
監督:谷垣健治
音楽:川井憲次
配給:クロックワークス
2024年/香港/125分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:九龍城寨之圍城/PG12
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