朝ドラ『あんぱん』好評の理由は“過程”の描写にあり “モデル”がいるからこその物語の強度

道徳くさすぎても鼻白むが、大事なのは塩梅である。さりげなく水を差し出すことを描くことで、観ている人の潜在意識にこの行為が植え付けられるだろう。例えば子どもがこの番組を観ていて、なにかのときに水も用意しようとぱっと思いつくかもしれない。みんな知っていることだから、当たり前のことだからと略すのではなく、当たり前のことこそ大切に宝物のように伝え続けること。基本。土台。迷ったときに戻る場所。それはおろそかにしてはいけない。やなせたかしの精神を大切に手のひらに乗せて次の世代に託す。そんな思いが画面からにじみ出ている気がした。
それはまるで、屋村がパンを作るときに使った、大切に抱えていた壺に入っている秘密の材料のようなものではないか。つまり、老舗のお店の秘伝のタレみたいなものである。

さて。『アンパンマン』のオマージュがいろいろ出てきて楽しい。屋村はジャムおじさんそのものだし、第8話ではしょくぱんまんの声を演じている島本須美があんぱんを買いにきた客の役で登場し、SNSは盛り上がった。
名前が似ているのは、羽多子(江口のりこ)はバタコさんで釜次(吉田鋼太郎)はかまめしどん。団子屋の桂万平(小倉蒼蛙)はカツドンマン? のぶはおそらくドキンちゃん……等々、『アンパンマン』のキャラを当てはめて想像する楽しさがある。筆者は結太郎にはおむすびまんを当てはめてみた。むすぶと結で、前作の朝ドラを思い出してしまうが。いろいろな国を旅して回っているのと帽子(編み笠)が特徴であること。ただ、旅してまわるのは屋村もそうで。屋村はジャムおじさんとおむすびまんのハイブリッドのようにも見える。完全に一致させるのではなく、いろいろ混ぜ合わせているのだろう。すべてがやなせたかしリスペクトにあふれている。リスペクトは清々しい。
参照
※ https://www.nhk.jp/p/anpan/ts/M9R26K3JZ3/blog/bl/pAVY30dQeR/bp/pw0N7jEKPY/
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、志田彩良、二宮和也、瀧内公美、山寺宏一、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、阿部サダヲ、妻夫木聡、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK






















