朝ドラを彩る「子役」の存在 『あんぱん』で永瀬ゆずなと木村優来が見つめる“死と再生”

汽車を追いかけて走る少女。連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)は、第1・2週で主人公の子ども時代を描く。
朝ドラの子役パートはいくつかの意味で重要である。ドラマ全体の序章で、その後の展開を示唆すること。これから始まる物語の“つかみ”であり、視聴者にとって子役パートがおもしろければ、その後も作品を観続けようと思える。長くて数週間で終わる子役パートだが、実は隠れた傑作ぞろいである。子役パートに限って言えば失敗作はないとほぼ断言できるくらいだ。

記憶に新しいところで、鮮烈な印象を残したのが『おちょやん』(2020年度後期)の毎田暖乃だ。杉咲花演じる千代の少女時代を演じた毎田は演技力が一つ抜けていた。継母に邪険にされ、実父のテルヲ(トータス松本)に奉公に出される千代は「うちが捨てられたんやない。うちがあんたらを捨てたんや」と叫ぶ。家族に捨てられ、夫に裏切られて、それでも演技だけは手放さなかった女優の生きざまを暗示しており、強烈なインパクトは波乱万丈の人生の始まりを告げるようだった。
古くからの朝ドラファンには、『おしん』(1983年度)の小林綾子や、『ふたりっ子』(1996年度後期)で一大ブームになった双子の“マナカナ”三倉茉奈・佳奈姉妹が有名である。オーディションを経て選ばれる子役たちは演技のセンスも抜群で、演技力は年々向上していると感じる。幼少期に芸能界入りした俳優の中には、戸田恵梨香のように朝ドラに子役で出演(『オードリー』(2000年後期))してから、のちに主演を務める(『スカーレット』(2019年後期))ケースもある。
『ちむどんどん』(2022年前期)で、主人公の比嘉暢子(黒島結菜)の幼少期を演じたのが稲垣来泉だ。沖縄を舞台に4きょうだいのにぎやかなエピソードに彩られた同作で印象的だったのが、子役パートの最終盤。父の賢三(大森南朋)が倒れたと聞いた暢子たち。青空の下、サトウキビ畑を懸命に走る姿に、この一家はどうなってしまうのだろうと手に力が入った。同作の時点で、稲垣は出演作多数だったが、その後も着実にステップアップ。現在、大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)で、主人公の重三郎(横浜流星)を慕う年少の遊女かをり役を熱演している。
子役パートのない作品もあって、最近では『おむすび』(2024年度後期)、『虎に翼』(2024年度前期)がそうだった。ヒロインの半生を描く都合上、スタートを10代後半に設定すれば1人の俳優が演じることができ、交代時の違和感を軽減できる。あえて子役パートを設けるのは理由があって、子役でしか描けないものがあると考えるのが普通だろう。あどけなさ、いたいけさ、無邪気な少年少女のイメージを子役に求めるのは、昨今では時代錯誤の感は否めない。一方で、作品が描こうとする主題を掘り下げることで、起用意図を深く理解できる。




















