『トワイライト・ウォリアーズ』吹き替えの配役に涙 往年のカンフーファンを唸らせる傑作

よく引き合いに出されるように、この作品は確かに香港版『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)だ。望郷の念を強く感じる。国内視聴者のほとんどが、昭和30年代の東京の下町にも、1980年代の香港のスラム街にも、一瞬も住んだことはないはずなのに。
よそ者をなんだかんだで受け入れる点も、一緒だ。つまり、龍兄貴=茶川竜之介(吉岡秀隆)であり、洛軍=淳之介(須賀健太)なのである。本作は、言わば“血と友情と裏切りの『ALWAYS』”だ。

吹き替えの話に戻るが、筆者世代(アラフィフ)にとって最も嬉しいのは、サモ・ハンの声を水島裕が当てていることだろう。先述したように、サモ・ハンと言えば水島裕だった。ただあの頃のサモ・ハンは、代表作『燃えよデブゴン』シリーズや、ジャッキー・チェンらと組んだ『プロジェクトA』(1983年)や『スパルタンX』(1984年)のイメージが強い。コミカルなお調子者キャラに、水島裕の高めの声がよく合っていた。
あれから約40年が経ち、73歳となったサモ・ハンの声にも、相変わらず水島裕はハマっていた。あの頃よりは落ち着いた声質で演じながらも、サモ・ハン本来のかわいさも感じ取れる。今作でのサモ・ハンの役名は「大ボス」である。香港の黒社会を牛耳る、ラスボスのような役どころだ。極悪人である。だが、演じているのがサモ・ハンであるため、なぜか憎み切れないかわいさがある。その辺りのニュアンスも、水島裕は上手く表現している。さすがレジェンド声優である。
かつてのサモ・ハンは、「めちゃくちゃ動けるデブ」だった。特に後ろ回し蹴りの美しさは、特筆に値する。筆者が今までに見た後ろ回し蹴りの中でも、五本の指に入る(ガチの格闘家含め)。だがさすがに73歳となった今は、昔のようにはもう動けないだろうと思っていた。
ガンガン動いていた。ルイス・クーとの立ち回りで繰り出した後ろ回し蹴りは、相変わらず美しかった。サモ・ハンは、「めちゃくちゃ動けるジジイ」へと進化していた。73歳がこれだけ動けるのなら、加齢の恐怖も和らぐというものだ。
劇場用パンフのソイ・チェン監督インタビューによると、現在、続編と前日譚の撮影が同時進行中らしい。この作品は、3部作なのである。前日譚の舞台は、1950年代。つまり、龍兄貴や大ボスらが、洛軍たちぐらいの年齢の頃の話だ。続編は、九龍城砦取り壊し後の各キャラたちが、新たな居場所を見つけていく物語とのことだ。
公開が待ち遠しい。そして当然、字幕版と吹き替え版の両方を、最低2回ずつは観る心づもりである。
■公開情報
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
全国公開中
出演:ルイス・クー、サモ・ハン、リッチー・レン、レイモンド・ラム、フィリップ・ン
監督:ソイ・チェン
監督:谷垣健治
音楽:川井憲次
配給:クロックワークス
2024年/香港/125分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:九龍城寨之圍城/PG12
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