今こそ振り返りたい“2015年アニメ史” 『君の名は。』前にあった地殻変動の予兆とは?

『妖怪ウォッチ』が東宝の記録更新
テレビアニメ以上に、この年は劇場アニメの躍進として記憶される年かもしれない。この年、日本映画で最高の興行収入を叩き出したのは、前年12月に公開開始となった『映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』で78億円の大ヒットを記録。公開2日間で16億円を突破し、当時の東宝の記録を塗り替えた。さらに邦画2位は細田守監督の『バケモノの子』の58.5億円。邦画ベスト10のうち、アニメ作品が6作品と過半数を占める結果となっている。
ファミリー向けや細田監督作品のような夏休みの大作映画のみならず、深夜アニメの劇場化作品も大ヒットした年として、2015年は記憶される。6月に公開された『ラブライブ!The School Idol Movie』は28.4億円の大ヒットを記録し、この年の松竹配給作品としてはトップの成績を収めることになった。
11月に公開された『ガールズ&パンツァー 劇場版』も24.5億円の成績をマーク(その後ロングラン上映を経て、2017年8月には25億円を突破している)。戦車同士のバトルを迫力の音響で描いた本作は、特殊音響を擁する映画館では多くのリピーターを獲得。特に立川シネマシティでは同年に公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』とともに、同館の爆音上映の代名詞となり、シネマシティのブランドを決定づけた作品となった。
その他、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(以下、あのはな)』の長井龍雪、岡田麿里、田中将賀が再び組んだオリジナルアニメ『心が叫びたがってるんだ。』も11億円の興行成績を記録。こちらも、深夜アニメ『あのはな』から生まれた作品と言え、深夜アニメが映画興行の主役になる萌芽を見て取ることができる年となった。
この翌年には新海誠監督の『君の名は。』が記録的ヒットを記録し、劇場アニメの新しい時代が幕を開けることになるが、その前年である2015年は、地殻変動の予兆が感じられる年だったと言えるだろう。
アマプラ・ネトフリの2大黒船上陸で、“配信時代”が本格化
だが、アニメを取り巻くこの年のトピックは作品だけにとどまらない。2025年現在、映像作品を定額見放題の配信で観ることが当たり前になっているが、2015年以前は決してそうではなかった。この年、NetflixとAmazon Prime Videoが日本国内でサービスを開始、アニメ視聴の定額配信サービスには国内企業の先行例はあったが、本格的に一般へと普及していったのは、この年の2大黒船の上陸からと言っていいだろう。配信時代になって、日本のアニメビジネスは構造的に大きな変化を迎えた。それは10年経った現在、アニメビジネスの根幹を成すものとなっていると言っても過言ではない。
振り返ってみると、2015年は今に続くアニメ市場を取り巻く傾向の初期段階だったと言える。リブート企画、劇場展開の活発化、配信時代の幕開けとこの年からアニメは新たな段階に突入した、そう言える年だったのではないだろうか。






















