『あんぱん』脚本家で占い師・中園ミホが描く“幸せを掴む法則” 過去のヒロインから考察

『あんぱん』中園ミホのラッキーガールの系譜

 代表作『やまとなでしこ』の主人公・神野桜子(松嶋菜々子)は、貧困家庭を飛び出してCAになった苦労人だ。自分が持っている唯一の武器である美貌を頼りに、金持ちの男を捕まえることで幸せになろうと奮闘する。しかし、彼女は貧乏な男・中原欧介(堤真一)に出会い、恋に落ちてしまう。自分の計画や目的とも、相性さえも合っていないはずの男に関わることで、逆説的に本当の幸せを手にすることができる。彼との出会いが桜子にとっての試練であり、彼と向き合うことが彼女の人生を豊かにしたのだ。

 『ハケンの品格』の大前春子(篠原涼子)は、一匹狼の凄腕派遣社員だ。組織を嫌い、ほとんど他人とは関わらない。その彼女が、年下の後輩や頼りない社員を不本意にも助けることになり、チームのピンチを救ったり、仲間の成長の一助になっていく。そして、いつしか仕事が楽しくなり、仲間との絆ができ、やはり苦手なはずの社員の男と恋に落ち、思いがけない幸せに出会ってしまう。

 桜子の名台詞に「残念ながら、あなたといると幸せなんです」があるが、中園作品では、必ずしも思い通りに人生が運ぶことが幸せなのではなく、逆境や自分が苦手なことや人に立ち向かい、ジタバタする中でこそ幸せを掴めるのだということが語られる。

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 朝ドラ『あんぱん』は、やなせたかしと小松暢の夫婦をモデルとした物語だ。中園はインタビューで、主人公・のぶのことを「夫を支えるというよりむしろ引っ張り上げ、常にリードしていく妻」のイメージだと語っている(※)。やなせたかしが『アンパンマン』でブレイクするのは50歳を超えてから。鳴かず飛ばずだった漫画家と共に歩み、2人で夢を掴み、幸せになるために必要なものは何だったのか。結婚、仕事と、女性の幸せが見えづらくなっている今、自分の幸せをどう見つけ、強運を掴んでいくのか、今の時代にも通じるラッキーガール像を期待したい。

 中園はまた、こうも言っている。「運はご機嫌な人が好き」。そういえば、桜子にしても、春子や『ドクターX』の大門未知子にしても、ただ頑張っているだけの女性ではない。どこか飄々としていて、つい笑ってしまうような間抜けさやユーモアがあり、周りを明るくしてしまうところがある。『あんぱん』のヒロインを務める俳優・今田美桜も、どこかちゃっかりしているような陽気さがあり、ファニーな魅力がある。ただ強いだけではない、お茶目でしなやかなラッキーガールを見せてくれそうだ。

参照
https://www.nhk.jp/p/anpan/ts/M9R26K3JZ3/blog/bl/pAVY30dQeR/bp/pw0N7jEKPY/

参考文献
中園ミホ『強運習慣100』(エクスナレッジ)

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、志田彩良、二宮和也、瀧内公美、山寺宏一、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、阿部サダヲ、妻夫木聡、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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